研究実績の概要 |
機能性ナノマテリアルの開発が大いに耳目を集めている. そのメインストリームである金属・半導体ナノ材料に関しては, 近年単純な対称構造からヘテロ接合などの非対称構造, またはらせんに代表される特殊な幾何構造へと興味がシフトしつつある. 一次元ポリマーの単一分子鎖は金属・半導体ナノ材料よりも更に微小な, 究極のナノ材料となりうる. 筆者が最近開発した配位高分子「ジピリン金属錯体ナノワイヤ」は, 有機溶媒中で超音波処理することで, ワイヤ繊維1本1本を剥離し, AFMを用いて観察することができる. この剥離挙動は有機高分子では極めて珍しい. 本研究ではビナフチルを軸不斉源とするヘリカルナノワイヤP1の構築を行った. 超音波処理したP1をHOPG平滑基板上にサンプリングし, 大気下AFMで観察すると, 2 μmを超える単一ポリマー鎖が観測された (高さ1.1 nm). 光機能として円偏光発光 (CPL) を追究した. 対応するモノマーM1に比べ, P1はCPLの非対称因子gCPLが5.9倍増大した. これはヘリカルなワイヤ構造が色素部位であるジピリン亜鉛錯体のキラリティを増幅・固定化しているためと考えられる. なお, 本研究はDr. J. F. Koegel (Universitaet Bremen) との国際共同研究, ならびに原野准教授 (A02)・河合教授 (A04) との領域内共同研究により得られたものである. この他イミン連結BODIPYオリゴマーの合成, 様々なクロミズムを示すテルピリジン錯体の創成を行った.
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