研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05355
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原野 幸治 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任准教授 (70451515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 自己集合 / 金属有機構造体 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
(1)同一金属と配位子からなる異なる金属有機構造体(MOF)間の構造変換 亜鉛(II)イオンとテレフタル酸からなる金属有機構造体(MOF)は数多くの構造が報告されており,特に三次元立方構造のMOF-5と二次元シート積層構造のMOF-2は,反応温度をわずかに変えるだけでそれぞれの構造が選択的に得られることが知られている.本研究では,MOF-2とMOF-5の相互変換が起こる実験条件を精査した結果,どちらの構造も熱力学的に安定であり加熱だけでは構造変換が起こらない一方で,酸や亜鉛(II)イオンの添加により配位子交換を誘起し,亜鉛周りの配位構造そのものを変換することでMOF-2とMOF-5間の相互変換が可能になることを見いだした.この結果は,MOF構造の「節」を形成する多核亜鉛構造の次元性が,最終的なMOFの三次元構造の決定要因となっていることを示すものである.今後MOF結晶の核前駆体の構造を分子レベルで明らかにすることで,高次配位構造体の形成機序について重要な知見が得られると期待される. (2)かご型Pd二核錯体の自己集合におけるシート状巨大中間体の捕捉 2つのピリジル基を有する二座配位子とPd2+との自己集合により,二核かご型錯体が形成することが知られているが,どのような速度論的中間体を形成して熱力学的に最安定なかご型構造へ収束するのかは明らかになっていなかった.本研究では,柔軟なリンカーをもつ二座配位子のPd2+との錯形成を定量的自己集合過程解析手法(QASAP法)と光散乱法により追跡することで,サブミクロンサイズの巨大中間体の生成が示唆された.この中間体について,独自開発した反応溶液の急速凍結乾燥手法を適用することにより,走査透過電子顕微鏡によってシート状の構造が形成していることをとらえることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
領域内外の共同研究を積極的に進めることにより,当初予定よりも幅広い研究対象に取り組んだ結果,MOF,二次元シートに加え,一次元金属錯体ワイヤやプロトン配位ポルフィリンナノワイヤなど,数々の集合体の形成機構を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に見いだされた,異なる金属有機構造体(MOF)間の構造変換の機構を解明するため,MOFの核形成における初期構造を捕捉する手法を確立する.個々の分子から結晶が形成する過程で,結晶の周期性がどの段階で獲得されるのか,という結晶化研究における長年の疑問を解決することができるであろう.
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