研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05359
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉沢 道人 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70372399)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子カプセル / 配位結合 / 異方性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、我々がこれまでに開発した高い分子内包能の「多環芳香族ナノ空間」を有する金属架橋カプセルを基盤として、これと「異方性(アシンメトリー)」を組み合わせることで、新たな『 異方性ナノ空間の化学 』を創出する。具体的な研究課題として、対称性の高いナノ空間を活用して、非対称性ゲスト分子を内包することで、選択的に異方性ホスト-ゲスト錯体を作製する。また、新規な非対称性ナノ空間を配位結合を使って構築し、その空間が持つ特異物性や相互作用などを解明する。本研究領域のA03班において、他の班との共同研究により、「溶液系」と「多環芳香族骨格」と「孤立ナノ空間」を特徴とした独創的な「空間アシンメトリー」の化学の推進に貢献する。本年度は、2つのナノ空間を有する金属架橋ダブルカプセルの設計と構築と結晶構造解析に成功した。このダブルカプセルは、2つの空間が近接し立体的な影響を受けるため、大小2種類のゲスト分子をそれぞれ選択的に異方性内包できることを明らかにした。また、高温条件では2分子のフラーレンを定量的に内包できることを見出した。この際、ダブルカプセルの中央の架橋金属イオンが解離し、連続した2つの空間に変形することで、2つのフラーレンを非接触で近接した状態に配置することに成功した。また、対称性の高いナノ空間を活用して、非対称性ゲスト分子である糖分子の水中での選択的な内包を達成した。種々の糖分子を検討した結果、2糖のスクロールが金属架橋カプセルに特異的に内包されることが明らかになった。また、硫黄クラスターの内包による安定化にも成功した。これにより、初めて質量分析(ESI-TOF MS)による精密な構造解析を達成した。新たな「多環芳香族ナノ空間」の機能を開拓した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、2つのナノ空間を有する金属架橋ダブルカプセルの設計と構築と結晶構造解析に成功した。このダブルカプセルは、大小2種類のゲスト分子をそれぞれ選択的に異方性内包できることを明らかにした。また、高温条件では2分子のフラーレンを定量的に内包できることを見出した。また、対称性の高いナノ空間を活用して、非対称性ゲスト分子である糖分子の水中での選択的な内包を達成した。2糖のスクロールが金属架橋カプセルに特異的に内包されることが明らかになった。また、金属架橋カプセルによる硫黄クラスターの内包による安定化にも成功した。これにより、硫黄クラスターの質量分析による精密な構造解析を達成した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、金属架橋ダブルカプセルの水中での、親水性のオリゴマーの内包に挑戦する。また、内包状態での分子レベルでの詳細な構造解析から、分子間相互作用や熱力学的パラメーターの測定を行い、水中で安定化のメカニズムが明らかにする。特に、親水性で非対称性なオリゴ乳酸や両親媒性で対称性のオリゴエチレンオキシドに対して、多環芳香族ナノ空間の結合能をンMR、MS、UV-vis、ITCなどで調査する。また、基質の長さに依存した結合様式を解明する。さらに結晶構造解析と組み合わせて、分子間相互作用を原子レベルで明らかにする。積極的に領域内での共同研究を行う。
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