研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05368
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長田 裕也 京都大学, 工学研究科, 助教 (60512762)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | らせん高分子 / 多孔性配位高分子 / リビング重合 |
研究実績の概要 |
様々な金属イオンとそれらを連結する有機配位子からなる多孔性配位高分子(PCP)の合成とその機能開拓に大きな注目が集まっている。特に最近の研究においては、巨大分子を直接包接可能な巨大内部空間を有するPCPに注目が集まっている。我々はこれまでの研究を通じて、ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)が、「リビング重合によって両末端を修飾可能」、「完全一方向巻きの剛直な不斉らせん構造を構築可能」、「外部刺激による不斉らせん制御が可能」であることを明らかにしてきた。本研究では、末端に配位性部位を有する主鎖らせん不斉ポリキノキサリンを合成し、金属との錯形成によって巨大不斉空間を内部に有するPCPの合成を目指している。 本年度の研究では、3核パラジウム錯体を開始剤として用いることで、3本腕ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の精密合成に成功した。3核パラジウム錯体前駆体について、単結晶X線構造解析を行うことでその構造を明らかにした上で、様々な重合度の3本腕ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)を合成し、その溶液X線小角散乱測定を通じてその分岐構造の詳細について明らかにした。 さらに予備的な結果ではあるが、ジイソシアノベンゼンモノマーの重合後に末端部位に金属に配位可能な部位を定量的に導入する手法の開発にも成功している。本手法を用いることで、末端部位に配位性部位を有する分岐型ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の合成が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、当初の研究計画に示した(1)分岐型ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の精密合成と、その(2)末端修飾について達成している。 分岐型ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の合成については、3核パラジウム錯体を前駆体して用い、かさ高いジイソシアノベンゼンを反応させてからモノマーの重合を行うことで、腕の長さを精密に制御可能であることを示した。 末端修飾について、重合後にポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)末端に残ったパラジウム部位を足がかりとし、過剰量の亜鉛試薬を作用させることで定量的に末端に配位性部位を導入可能であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討によって、末端に配位性部位を有する分岐型ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の精密合成が可能となった。今後はこのポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)をビルディングブロックとして用い、様々な金属との錯形成検討を通じて、巨大内部空間を有するPCP合成を目指す。
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