公募研究
本研究では、多彩な反応性を示す金属錯体触媒と、精緻な反応場を提供するバレル型タンパク質の融合により、アシンメトリー配位圏を有するバイオハイブリッド触媒を構築し、従来の金属錯体や酵素にはない新たな位置選択性や官能基選択性を付与した合成反応の開拓に取り組んだ。具体的には、反応性の高いRh錯体を固定化したバイオハイブリッド触媒を活用し、位置選択的な炭素-炭素結合形成反応、また、バレル空孔内に拡張型のアシンメトリー配位圏を構築し、不斉Diels-Alder 反応を実証した。これまでに強固なバレル構造を有するニトロバインディンの疎水空孔を活用して、様々な金属錯体触媒を共有結合により残基選択的に固定化したバイオハイブリッド触媒を開発してきた。そこで、初年度は、芳香族基質の認識を狙い、ピレン部位をの空孔に固定化したアシンメトリックな反応場を作製し、不斉Diels-Alder 反応の選択性を評価した。NBのCys96 に対してN-(1-ピレニル)マレイミドを共有結合的に連結し、同様にNB変異体についても調製した。一連のコンジュゲートは、ピレン部位の誘起CD に二通りのパターンに大別されたことから、NB の空孔内においてピレン部位は2通りの配向をとると推察された。このようなピレン部位の配向の違いが、反応の選択性に寄与すると考え、Diels-Alder 反応を検討した生成物を評価したところ、NB-Pyrは高いendo選択性と立体選択性で反応が進行したピレン部位をバレル型タンパク質の疎水空孔に結合したアシンメトリックな反応場を構築し、Diels-Alder反応の選択性が制御可能であることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
ピレン部位をバレル型タンパク質の疎水空孔に結合したアシンメトリックな反応場を構築し、Diels-Alder反応の選択性が制御可能であることをすでに見出しており、概ね順調に進展している。
金属錯体触媒と精密かつ多彩なアシンメトリックな配位圏を提供するタンパク質を融合したバイオハイブリッド触媒による位置選択的・官能基選択的なC-C結合反応を開拓する。これまでに高い反応性を有するRh錯体をリジッドなベータバレル型タンパク質の疎水性空孔に固定化したバイオハイブリッド触媒を構築しており、この系を利用して、位置選択的・官能基選択的なC-C結合形成を伴うイソキノリン合成を探索する。予備的な検討から、アルキンとオキシム基質からイソキノリン環を合成するRh連結バイオハイブリッド触媒の調製しており、蛍光性のイソキノリン誘導体を生成物とする簡便な反応評価系についても確立できている。本年度は、この手法を実際に活用して、環化付加反応によるイソキノリン合成における触媒活性の向上と位置選択性の向上を狙ってスクリーニングを実施する。Rh錯体の近傍のアミノ酸にランダムおよび飽和変異を導入し、イソキノリン合成において高活性および位置選択性の高いタンパク質ホストを網羅的に探索する。選び出したタンパク質ホストについては、精製品のバイオハイブリッド触媒を調製して、触媒活性や選択性をより詳細に評価する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
ACS Catal.
巻: 8 ページ: 3358-3364
10.1021/acscatal.7b03652
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~hayashiken/index.html