研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05373
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
滝澤 忍 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50324851)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バナジウム / 二核 / 単核 / 不斉カップリング / BINOL / sorazolon E2 / カルバゾール / 二重活性化 |
研究実績の概要 |
高酸化状態にあるオキソバナジウム金属自身に中心性キラリティーを導入し集積化することで、キラルな酸及び一電子移動型高次機能集合体として働く高活性多機能不斉触媒の開発研究を行った。ラセミ化しやすいテトラヘドラル構造を有するオキソバナジウム錯体を、キラル環状多座配位子を用いることで強固な偽オクタヘドラル構造に固定する。結果、金属自身の中心性キラリティーは安定化し、化学反応において本キラリティーを様々なプロキラル原料に効率的に転写できる。開発したキラル錯体を集積化し触媒として活用することで、ラセミ体としての合成も困難なキラルな第四級炭素、ビフェニル及びヘリセンなど有用キラル骨格の構築を目指した。 サリチルアルデヒド誘導体と嵩高い置換基を有する光学活性アミノ酸から調製したシッフ塩基を、5価のオキソバナジウム金属塩の不斉配位子として用いるとバナジウム自身が中心性キラリティーを有する金属錯体が得られた。本二核バナジウム錯体と単核バナジウム錯体を、4位に置換基を有する2-ナフトール誘導体を反応基質とする酸化的不斉ラジカルカップリング反応にて触媒活性を評価した結果、両錯体は共に高活性な不斉触媒として機能することが明らかとなった。さらに二核と単核のバナジウム触媒では、分子内及び分子間カップリングと異なる反応機構でカップリング体を与えることが明らかとなった。触媒構造を最適化することで1,1'-bi-2-naphthol (BINOL)の両鏡像体を大量供給可能な実用的なダイバージェント合成法を確立することができた。本反応は、二核バナジウム触媒の0.01 mol %のみの使用でも良好に進行する。 キラルバナジウム触媒の合成化学のへの応用研究として、ヒドロキシカルバゾールの酸化的不斉カップリング反応を検討した結果、市販薬品から3工程で天然生物活性物質(+)-sorazolon E2等の初めての触媒的不斉全合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二核と単核のバナジウム触媒を使い分けることで、キラルビルディングブロックとして有用な1,1'-bi-2-naphthol (BINOL)誘導体の両鏡像体を大量供給可能な実用的なダイバージェント合成法を確立することができた。 本触媒はヒドロキシカルバゾールの酸化的不斉カップリング反応にも有効であり、短工程でキラルビアリル系天然生物活性物質を合成できることを証明した。
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今後の研究の推進方策 |
モノサイクリックフェノールのカップリング反応についても、現在、検討している。
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