研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05374
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
棚瀬 知明 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (50207156)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子性金属鎖 / 不斉 / 多座ホスフィン / パラジウム / 分子デバイス / 光学分割 |
研究実績の概要 |
本研究では,申請者のPd8核鎖を中心とするこれまでの研究を基盤に,キラルな直鎖状四座ホスフィンrac-dpmppmに支持されたPd4核鎖を構造単位とし,電解還元を用いた逐次的伸長法により低原子価分子性金属ワイヤーの創成を行う。Pd8核鎖生成過程で見出されたPd4核ユニット間のキラル識別を介した自発的な自己整列のメカニズムを精査し金属鎖の拡張に応用する。また,不斉な置換基を導入したキラルな直鎖状四座ホスフィンを新たに設計し,それらを用いてキラルな分子性金属鎖の合成を行い,得られたPdを中心とする分子性金属鎖の不斉に由来する物性・反応性等を明らかにし,それらキラル物性を利用した新たな機能の開発を目的とする。本年度は,(1)キラルな直鎖状四座ホスフィンrac-dpmppmを用いたパラジウム分子ワイヤーの合成と自己不斉認識によるPd鎖の拡張として,直鎖状4座ホスフィンmeso/rac-dpmppm (Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2)を支持配位子としたPd8核金属鎖について,高温で解離生成したPd4核フラグメントの自己キラル認識を経たPd8核鎖の自発的整列現象を見出し,このようなキラルソーティングに対する要因について構造及び電子状態から解明を行った(この結果は一部Chem. Eur. J. 2017に発表した)。また,rac-dpmppmの光学分割についても研究を行った。さらに,(2)新奇不斉四座ホスフィン配位子によるキラルな分子性金属鎖の創成として,N原子で連結された直鎖状四座ホスフィンdpmppaR (R = Ph)を合成し,ホモキラルなdpmppaPhにより支持された,直鎖状Pd4核鎖の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直鎖状4座ホスフィンmeso or rac-dpmppm (Ph2PCH2P(Ph)CH2P(Ph)CH2PPh2)を支持配位子としたPd8核金属鎖を合成と構造・物性を明らかにするとともに,高温で解離生成したPd4核フラグメントの自己キラル認識を経たPd8核鎖の自発的整列について詳細な研究を行い,世界的に水準の高いChem. Eur. J. 2017に発表した(back cover pictureに採択された)。また,PNP架橋を有する多座ホスフィンとして,dpmppaR (R = Ph)を世界に先駆けて合成し,ホモキラルなrac-dpmppaPhで支持された直鎖状パラジウム四核鎖を合成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画どおり以下の項目について研究を進める。1)キラルな直鎖状四座ホスフィンrac-dpmppmを用いたパラジウム分子ワイヤーの合成と自己不斉認識によるPd鎖の拡張:申請者がこれまでに開発したmeso-dpmppmを支持配位子とするPd8核鎖を中心とする直鎖状低原子価金属クラスターの研究を基盤に,キラルな直鎖状四座ホスフィンrac-dpmppmに支持されたPd4核鎖を構造単位とし,電解還元を用いた逐次的伸長法により低原子価分子性金属ワイヤーの創成を行う。Pd8核鎖生成過程で見出されたPd4核ユニット間のキラル識別を介した自発的な自己整列のメカニズムを精査し金属鎖の拡張に応用する。X線結晶解析や種々分光分析により同定を行い,理論計算により電子状態を明らかにする。2)新奇不斉四座ホスフィン配位子によるキラルな分子性金属鎖の創成:二座ホスフィンユニットPh2PCH2P(Ph)Clと様々な1級アミンとのカップリングを行い,N原子で連結された直鎖状四座ホスフィン(dpmppa(R))を合成する。アミン類にL-アミノ酸誘導体を用いることで不斉を導入した直鎖状四座ホスフィンを新たに設計し,それらを用いてキラルな分子性金属鎖の合成を行う。Pd4核鎖連結部にC2らせん構造が誘起されることを利用し,電解還元による逐次的な金属鎖の伸長によりキラルな金属ワイヤーの合成法を開発する。 項目(1)及び(2)で得られたPdを中心とする分子性金属鎖の不斉に由来する物性・反応性等を明らかにし,それらキラル物性を利用した新たな機能の開発を行う。
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