研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05380
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
今村 穣 首都大学東京, 理工学研究科, 特任教授 (60454063)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MOF |
研究実績の概要 |
初年度はこれまでに整備した有機薄膜太陽電池材料の全自動シミュレータを元に、MOF材料に適用可能なシミュレータの開発を行った。 具体的には、高次機能MOFの生成に向けて、総説などから磁性を持つ金属イオンやキラリティを持ちうる有機配位子を含むMOF生成用のライブラリを作成した。それらのライブラリから構造を自動生成し、電子状態計算が遂行できるか数値的に検討を行った。有機半導体ユニットで検討を行ったところ、UFFなどの分子力場を用いて初期構造を生成した場合は、密度汎関数理論において幾つかのユニットで構造の捻じれが発生し、安定な構造が得られなかった。一方、半経験的計算手法であるPM7を用いて初期構造を発生させた場合は問題無く安定構造を得ることができた。以上のことから、初期構造としてある程度の妥当な構造を準備するには、半経験的計算手法程度の計算精度が必要があることがわかった。 また、高次構造自動生成に向けて、結晶構造予測のソフトウェアであるUSPEXを用いて有機半導体に関して検討行ったが、計算コストが比較的低い古典的分子動力学法を用いても最安定な結晶構造を得るのに計算時間が掛かることがわかった。これまで、非常に単純なベンゼンなどでは結晶構造の予測に成功したが、その他の有機材料などでは結晶予測に失敗した。今後MOF材料候補のユニットのサイズは、ベンゼンよりもかなり大きくなることが予測されるため、新しい結晶構造探索アルゴリズムの検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度はこれまでに整備した有機半導体の全自動シミュレータを元に、金属イオンや有機配位子から機能性金属錯体ユニットの生成、集積、及び集積後のMOFの電子状態の検討を全自動で行えるように整備し、ほぼ完成の域に達した。しかし、高次構造自動生成は想像以上に難しいことがわかり、アプローチの検討・計算時間が掛かり計画が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に整備した全自動シミュレータを用いて、以下のスクリーニングで新規材料を見つける。 ①第一スクリーニング/機能性金属錯体ユニットのコンビナトリアル合成:全自動シミュレータを用いてMOFの構成要素である金属イオンや有機配位子のコンビナトリアル合成により機能性金属錯体ユニットを生成する。多孔のサイズ制御の観点から、酸素・窒素と同じ族の硫黄・セレン・リンのドナー性配位子や共役長を伸長した配位子を積極的に考慮する。単位ユニット(モノマー)のコンビナトリアル合成を行う。また、生成した機能性金属錯体ユニットはキラルなどの基本機能・磁性などの付加機能によりスクリーニングをする。 ②第二スクリーニング/MOFの結晶構造:次に全自動シミュレータで、機能性金属錯体ユニットが集積したMOFを生成する。得られたMOF結晶において、非対称キラル配位空間が形成されているか検討し、材料のスクリーニングを行う。非対称キラル配位空間は、水素結合やπ…π相互作用から構築されているため、その観点からMOF材料を検討する。また、磁性・伝導特性などの付加機能についてもスクリーニングを実施する。最後に、電子状態から特徴量を抽出し、MOFの基本・付加機能と相関が強い記述子をデータ科学のツールに導入されている線形回帰手法で明らかにする。その情報に基づき金属イオンや有機配位子のライブラリを更新し、目標の高次機能非対称配位空間のMOF材料が開発できるまで、①②スクリーニングを繰り返す。 ③第三スクリーニング/キラル認識・キラル反応:②で絞られたMOF候補材料についてキラル認識・キラル反応を検討しスクリーニングする。また、キラル触媒反応に関しては先行研究で検討されている不斉反応系で検討する。データ科学でキラル認識・キラル反応活性を決定する因子を解明し、ライブラリにも反映する。目的を達成するまで、①-③のスクリーニングを繰り返す。
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