研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05381
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
酒井 隼人 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (60708486)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 一重項分裂 / MOF / キラル / ペンタセン |
研究実績の概要 |
本研究は一重項分裂およびキラルMOFのホストーゲスト特性と不斉環境の協調による新規光機能性材料の構築が目的である。本年度は、まず一重項分裂発現可能なキラルMOF構築に向けて基盤となる一重項分裂発現可能な配位子合成を検討した。本研究では、一重項分裂発現可能な代表的な分子ペンタセンに注目し、その二量体の合成検討を行った。後のMOF構築を考慮し、リンカーとしては剛直なベンゼン環、三重結合を基盤とするユニットを用いることとした。このような分子設計を基に、ペンタセンユニット間を連結するリンカーを種々変更し、ユニット同士の距離と配向性が異なるペンタセン二量体を合成した。報告例を参考にまず、ペンタセンキノンを合成しその後ペンタセンへと変換した。その後、種々のカップリング反応を行うことで目的とするペンタセン二量体を合成した。得られたペンタセン二量体の、定常分光測定およびDFT計算を行い、ユニット間の色素間カップリングについて検討した。その結果、吸収スペクトルのシフトや蛍光消光が明確に観測された一重項分裂発現が期待される二量体の合成に成功した。次に、一重項分裂発現が期待されるペンタセン二量体に関しては、フェムト秒過渡吸収測定を行った。その結果、1ナノ秒以内に一重項の減衰が観測され、その後明確な三重項の上昇が観測され一重項分裂の発現が観測された。その後、ナノ秒過渡吸収測定を行い、三重項状態の寿命に関して評価を行い、後の反応が可能な長寿命なペンタセン二量体に関して検討を行った。以上の検討から、MOF構築に適切な剛直かつ一重項分裂発現可能なペンタセン二量体を合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一重項分裂発現可能な剛直なペンタセン二量体を合成することに成功した。この分子からキラル分子への誘導化は極めて簡便である。また合成した二量体の分子構造はMOFの合成に利用されている配位子の構造が基盤となっているものである。したがって今回合成に成功した二量体を利用するとキラルMOFの合成も円滑に進むと予測される。したがって本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、合成することに成功した剛直なペンタセン二量体の構造を基盤とし、まずキラルなペンタセン二量体を合成する。合成したペンタセン二量体を用いてキラルなMOFを合成する。得られたMOFの内部構造をX線構造解析をもちいて決定する。次にMOFの基礎的光物性評価を行い、後続分光を用いて一重項分裂の評価を行う。そしてゲスト分子を導入し、目的とする一重項分裂およびキラルMOFのホストーゲスト特性と不斉環境の協調による新規光機能性材料の構築を目指す。
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