研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05382
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
張 浩徹 中央大学, 理工学部, 教授 (60335198)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レドックス / 金属錯体 / キラリティ / 液晶 / 結晶 / 液体 |
研究実績の概要 |
本研究は、レドックス活性能を有するキラル錯体分子集合体を創成し、凝集相における電気化学反応を誘発することで、不斉構造と連動した異方的相状態の動的変換と機能発現を指向している。その主たる課題は、(1)不斉レドックス活性錯体の合成と、(2)その超分子構造体の設計および電気化学的異方性変換である。目的とする不斉レドックス活性分子の具現化として、①八面体型(Oh)や②非対称配位原子を有する四面体型錯体(Td)及び、③ヘリカル(hel)ベンゾキノンからhel型錯体に基づいた錯体合成を指向している。初年度は、レドックスにより多量化を生じないN/Oヘテロ配位元素を持つレドックス活性配位子、3,5-di-tert-butyl-2-[(4-phenyl)amino]phenol、を基本骨格に用いたZn(II)錯体の合成条件の検討を行った。その結果、Zn(II)中心の触媒活性による配位子骨格の変換が生じたため、セミキノネート種のin situ発生による合成または、ベンゾキノン型配位子と亜鉛金属による反応が必要であるとの知見を得た。一方、レドックス活性錯体超分子の設計においては、中性型白金錯体に含まれるカテコラート及びbpyユニットにそれぞれアルキル鎖とエチレングリコキシ鎖を導入した非対称錯体が室温でスメクチック液晶相を発現することを見いだした。またこれらが有機溶媒中で強い自己集合能を有することも見いだした。またイオン性レドックス活性錯体の設計においては、導入するアンモニウムカチオンに修飾するアルキル鎖種とその数を制御し、結晶相、液晶相、液体相の安定性を合理的に設計できたのに加え、室温における直接的なアンバイポーラ型電解による相変換に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規レドックス活性キラル錯体分子を用いて、不斉認識による0・1・2・3次元結晶構造を構築し、秩序構造の次元性を制御することで結晶相・液晶相・液体相を設計する。また、構築されたキラル分子集合体に対する直接電気化学的レドックスを誘発することで、①不斉分子の状態変換に基づいた機能、②集合相に基づいた機能及び、③その相乗効果に基づく機能発現を目指している。 不斉レドックス活性錯体の合成においては、第一ターゲットである、N/Oヘテロ配位元素を持つレドックス活性配位子、3,5-di-tert-butyl-2-[(4-phenyl)amino]phenol、を基本骨格に用いたZn(II)錯体の合成を試みたものの、Zn(II)中心の触媒活性による配位子骨格の変換が生じたため、セミキノネート種のin-situ発生、またはベンゾキノンとZn金属との反応による錯体合成を進める必要が生じた。今後、合成条件の最適化を完成させた後、配位子部位にアルキル直鎖/分岐鎖やオリゴエチレングリコキシ鎖を導入し、結晶、液晶、液体相を創成する。また凝集相におけるキラリティー発現と直接的レドックス変換を進める。一方、側鎖にアルキル及びエチレングリコキシ鎖を導入した非対称型レドックス活性錯体の創出に成功した。興味深いことに本錯体は室温でスメクチック液晶相を形成すると共に、溶液中で相対的に強い自己会合能を発現することが明らかとなり、側鎖種の対称性により集積構造とレドックス特性を制御できる可能性を示唆する。最後に、イオン性レドックス活性液晶の設計においては、導入するアンモニウムカチオンの対称性を制御することで、その集積相を制御できた。またこれらの結晶、液晶、非晶質相に対し、直接的レドックスを誘起しアンバイポーラ型マクロ相変換にも成功し、論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)不斉レドックス活性錯体の合成 本研究では、目的とする不斉レドックス活性分子の具現化として、①八面体型(Oh)や②非対称配位原子を有する四面体型錯体(Td)及び、③ヘリカル(hel)ベンゾキノンからhel型錯体に基づいた錯体合成を指向している。昨年度は、レドックスにより多量化を生じないN/Oヘテロ配位元素を持つレドックス活性配位子、3,5-di-tert-butyl-2-[(4-phenyl)amino]phenol、を基本骨格に用いたZn(II)錯体の合成を試みたものの、Zn(II)中心の触媒活性による配位子骨格の変換が生じたため、セミキノネート種のin-situ発生、またはベンゾキノンとZn金属との反応による錯体合成を進める。合成条件の最適化を完成させた後、配位子部位にアルキル直鎖/分岐鎖やオリゴエチレングリコキシ鎖を導入し、結晶、液晶、液体相を創成する。また凝集相におけるキラリティー発現と直接的レドックス変換を進める。 (2)不斉レドックス活性錯体を用いた超分子結晶・液晶・液体の創成 上述の不斉錯体は、電荷状態により中性またはイオン性結晶・液晶・液体を形成し、レドックス誘起によりそのマクロ物性が変化しうる。中性錯体については、レドックス活性配位子上に排除体積と柔軟性を変化させた長鎖部位を導入することで三相を設計する。イオン性錯体においては、アニオン性錯体間相互作用及び対カチオン種により超分子構造を制御する。不斉種及び分子間相互作用の制御により、螺旋結晶やキラル液晶相、またレドックスによりこれらを形成しうる液相を構築する。また電気化学的状態変換後に形成される凝集相についても同上の設計を施すことで、等方性相、一次元、二次元、三次元マクロ相を合理的に制御する。
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