研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05383
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
芳賀 正明 中央大学, 理工学部, 教授 (70115723)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ルテニウム二核錯体 / プロトン共役電子移動 / ヘテロ接合膜 / layer-by-layer法 / スイッチング素子 / 整流素子 / 二端子デバイス |
研究実績の概要 |
混合原子価状態をとる剛直な二核錯体を表面に集積化させた自己組織化膜(SAM膜)は単一分子伝導・整流効果・分子スイッチなど様々な特性を示す。本年度の成果として、(1)両端にホスホン酸アンカー基をもつ対称Ru二核錯体のSAM膜をITO電極上に自己組織化させた一連のRu錯体の単一分子伝導を、ITO被覆カンチレバーを用いたCP-AFMを用いて測定した。Ru単核錯体のI-V特性(電流―電位特性)では正負で対称的なI-V特性を示し、測定系の湿度を変えても対称的なI-V特性は変わらない。一方、両端に4脚ホスホン酸基をもつRu二核錯体RuN-Pでは、高湿度(60%)で非対称的なI-V特性となり、その整流比が~1000と大きくなることを見出した。表面場での対称錯体が、外部環境の変化で伝導性での非対称性が大きく反映される点は興味深い。 次に、(2)プロトン共役電子移動可能なベンズイミダゾール三座配位子をもつ二つの錯体RuNH-PとRuCH-Pを、配位結合を用いたLayer-by-Layer(LbL)法によりヘテロ積層膜をITO基板上に作成した。このヘテロ積層膜が印加電位、pH、光による論理ゲートとして働くことを見出した。集積アシンメトリーをもつヘテロ接合系としてのITO||(RuCH-P)4とITO||(RuNH-P)4はpH7ではそれぞれ+0.09 Vと+0.59 V vs Ag/AgClだが、4層ヘテロ接合膜ITO||(RuCH-P)4|(RuNH-P)4では内層のRuCH-Pのレドックス応答が+0.09 Vに見られるが、外層のRuNH-Pの応答は触媒波としてのみ観測された。このヘテロ接合膜に光照射すると、酸性領域でのアノード電流が、塩基性領域ではカソード電流に変わるスイッチング現象が観測された。 現在プロトン勾配をもたせたプロトン伝導性高分子を挟んだ二端子デバイスについて評価している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトン共役電子移動を示す錯体のLbL積層膜が安定なプロトン応答性を示すことがわかったので、これを二端子デバイスとするプロトンによる動作するメモリスタの研究の初期動作を観察できたことからさらなる性能向上をはかれる可能性がでてきた。
|
今後の研究の推進方策 |
二端子デバイスのサイズの微小化をはかり、プロトン伝導による記憶デバイスとするための錯体の多様化、プロトン伝導ポリマーの選択、プロトン伝導性を示すMOF錯体の採用など、メモリスタ動作のさらなる性能向上をはかれる工夫をしていく。
|