研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05389
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
満身 稔 岡山理科大学, 理学部, 教授 (20295752)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 混合原子価三核鉄錯体 / 原子価非局在-局在転移 / 水素結合 / キラル構造 |
研究実績の概要 |
本研究では,双安定な分極が可能な電気双極子をもつ金属錯体を研究対象として,(1)混合原子価三核鉄(II,III,III)配位高分子の原子価秩序を分極の起源とする強誘電体と(2)水素結合型p-ベンゾセミキノン錯体の水素結合内のプロトンを分極の起源とする強誘電体の開発を目指して研究を行った. (1)では,D3h対称性の1,3,5-tris(4-pyridyl)benzene (TPB)を架橋配位子に用いて,[Fe3O(O2Ct-Bu)6] を架橋した [Fe3O(O2Ct-Bu)6(TPB)](solvent) (1) を新規に合成し,その結晶構造と誘電性,磁性について調べた.X線結晶構造解析から,錯体1の結晶構造は [Fe3O(O2Ct-Bu)6] ユニットがD3h対称性のTPB配位子によって架橋された二次元ハニカム構造を持つ多孔性配位高分子であることを明らかにした.273Kにおける三つの鉄原子は全て等価であり,錯体1は平均原子価状態であると考えられる.誘電率の温度依存性では,原子価の非局在-局在転移に関連して,二段階の誘電異常が観測された.この結果と一致して,磁化率の温度依存性では,168-193 Kと224-241 K付近で二段階の磁気異常を明らかにした.したがって,この錯体は二段階の相転移を起こしていると考えられる.この相転移の起源は,(Fe2.67+)3ー(Fe2.5+)2(Fe3+)ー(Fe2+)(Fe3+)2の原子価転移によると予想している. (2)では,ロジウム(II)-セミキノン錯体の対アニオンとして,新規となる二種類のキラルビス(アルキルジオキシ)ボレートのナトリウム塩の合成を行った.これらの対アニオンと(1S)-(+)-10-camphorsulfonateを用いて,ロジウム(II-セミキノン錯体 [Cp*Rh(η5-HSQ)]+,[Cp*Rh(η5-HSQ-Me4)]+と組み合わせ,水素結合型ロジウム(II)-セミキノン錯体の合成・結晶化を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)X線結晶構造解析から,錯体1の結晶構造は [Fe3O(O2Ct-Bu)6] ユニットがD3h対称性のTPB配位子によって架橋された二次元ハニカム構造を持つ多孔性配位高分子であることを明らかにした.273Kにおける三つの鉄原子は全て等価であり,錯体1は平均原子価状態であると考えられる.誘電率の温度依存性では,原子価の非局在-局在転移に関連して,二段階の誘電異常が観測された.この結果と一致して,磁化率の温度依存性では,168-193 Kと224-241 K付近で二段階の磁気異常を明らかにした.したがって,この錯体は二段階の相転移を起こしていると考えられる.この相転移の起源は,(Fe2.67+)3ー(Fe2.5+)2(Fe3+)ー(Fe2+)(Fe3+)2の原子価転移によると予想している.この錯体について,分極-電場特性を調べる予定である. (2)(1S)-(+)-10-camphorsulfonateを用いた場合,スルホン酸基がロジウム(II)ーセミキノン錯体と水素結合を形成したため,ロジウム(II)-セミキノン錯体の水素結合鎖を得るには至っていない.一方,キラルなアニオンの合成に関しては,新規となる二種類のキラルビス(アルキルジオキシ)ボレートのナトリウム塩の合成を行うことができた.これらの対アニオンを用いてロジウム(II)-セミキノン錯体の結晶化を行ったところ,セミキノン錯体がプロトンを介して繋がるのではなく,Na+イオンによって繋がることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
(1)まず,錯体1 について,分極-電場特性を調べる.また,乳酸などキラルなカルボン酸を配位子に用いて,キラルカルボン酸架橋混合原子価三核鉄(II,III,III)錯体の合成・結晶化を行う.これらの錯体をピラジンや1,3,5-tris(4-pyridyl)benzene (TPB)で架橋した混合原子価三核鉄(II,III,III)配位高分子を合成・結晶化し,結晶構造と磁性や誘電性などの物性について検討を行う. (2)セミキノン錯体がNa+イオンによって繋がることを避けるために,キラルビス(アルキルジオキシ)ボレートのアルキルアンモニウム塩を合成し,これらを用いて水素結合型ロジウム(II)-セミキノン錯体の合成・結晶化を行い,結晶構造と誘電性などの物性について検討を行う.
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