本研究では,メソポーラス金属にキラル選択性のある細孔表面を作り出し,キラルセンシングへの応用を目的としている.キラル認識は,電極表面のキラル認識部と認識対象となるキラル分子との親和力に鏡像体間で差が生じることから,認識に伴う出力信号の差をサイクリックボルタンメトリ(電気化学的な手法)により測定することで確認できる.具体的に実験では,メソポーラス金属の作製の際に,ブロックコポリマーを水溶液中でミセル化し,目的とする金属の金属塩類を溶解させた後,キラル分子をその溶液中に共存させ,金属の析出にそのキラル分子の転写を金属表面で行う.すなわち,それらの分子構造の転写された形(完全ではないものの)が金属骨格中に残る.このキラル分子転写した金属表面は,様々な生体物質のキラリティを判断することができることを確認した.
さらに,異なる細孔径や壁厚など,用いる界面活性剤の種類・分子量や金属イオンの種類・量を調整することにより,様々なメソポーラス金属の合成に成功した.特に,合金化することで,グルコースやDOPAなどの生体関連物質の酸化反応を大幅に促進させることができた.
また,リソグラフィー技術により,基板上に導電部位をパターンし,その上でのメソポーラス金属膜の成膜にも成功している.このようにパターンニングすることで,通常の薄膜よりも,ゲスト種がアクセスしやすい構造になっており,またデバイスの一部(検出部)として搭載することを考えた場合にも,非常に魅力的な構造と言える.また,高分子の薄膜を一層均一に塗布することで,食塩などの阻害物質の影響を抑えることにも成功し,実デバイスの設計を考えた上では重要な知見である.
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