研究実績の概要 |
沈み込み帯地震発生域上限付近における非地震性から地震性への断層運動の遷移を再現するため、後述する玄武岩、チャート、泥岩、砂岩の掘削・メランジュ試料について、沈み込み帯地震発生域上限付近の想定温度(50~200℃)・有効圧(12~120 MPa)条件下で、変位速度を0.1155, 1.155, 11.55 μm/sの間でステップ状に変化させながら三軸摩擦実験を行い、断層運動の安定性の指標である a - b 値(正ならば安定で非地震性、負ならば不安定で地震性となり得る)を得た。100℃以下の実験には、南海トラフ付加体泥岩、南海トラフに沈み込む前の海洋地殻玄武岩・被覆層砂岩、および日本海溝に沈み込みつつあるチャート、それぞれの掘削試料を使用した。一方、150℃以上の実験には、陸上に露出した白亜紀付加体メランジュ中の玄武岩、チャート、泥岩および砂岩の各試料を使用した。 実験の結果、50℃では全試料で a - b >0、100℃では泥岩では a - b >0、砂岩と玄武岩で a - b ~0、チャートで a - b <0、さらに200℃では全試料で a - b <0となり固着すべりを示した。このように、付加体構成岩石中で温度上昇に伴って非地震性から地震性への断層運動の遷移が起こることが再現できた。また、遷移温度はチャートで50~100℃、玄武岩と砂岩で約100℃、泥岩で100~150℃である。これは、地震発生域上限付近では、同一温度でも断層帯を構成する岩石によって地震性~非地震性の多様な断層運動が起こることを意味する。
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