研究実績の概要 |
スロー地震の発生には水が重要な役割を果たしていると考えられているが、スラブから放出された後の水の振る舞いについて詳しく調べた例は少ない。そこで本研究では特に、水が岩石の隙間を出入りする際の岩石抵抗の効果によって水の移動がどのように変化するのかを調べた。まずは1次元の計算領域で、本研究で必要となる数値モデル(粘弾性変形する岩石の隙間を水が浸透流の形で移動するモデル)を確立した。また浸透率、岩石抵抗、境界条件、計算の時間ステップなどを変化させながらそれらの要素が水の振る舞いに与える影響を評価した。その後モデルを2次元の計算領域へと拡張し、岩石抵抗が大きいときには放出された水の一部がスラブのより内側へと移動することを示した。さらにモデルを3次元の計算領域へと広げ、スラブが外側に向かって折れ曲がる場所では水が互いに集まるように移動し、そこでの水の量や間隙水圧が増加することを示した。そしてそれらの結果をもとに、水の移動とスロー地震の島弧に沿った方向の活動変化やスラブ内地震、さらにスラブの沈み込み角度との関係を議論した。これらの結果をまとめたものは国際誌Geochemistry, Geophysics, Geosystems、そして国内誌「地震」に投稿・受理されている。学会や研究集会にも積極的に参加し、5月には日本地球惑星科学連合連合大会、9月にはスロー地震学研究集会、10月には日本地震学会秋季大会、そして12月にはアメリカ地球物理学連合秋季大会に参加し発表を行った。
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