研究領域 | スロー地震学 |
研究課題/領域番号 |
17H05421
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
松川 宏 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20192750)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 摩擦 / 前駆滑り / 摩擦則 / 階層性 / クリープ |
研究実績の概要 |
I. 固体間の滑り摩擦に関しては、"摩擦力は荷重に比例する、摩擦力は見かけの接触面積に依存しない”というアモントン則が広い範囲で成り立つ事が知られている。これに関した研究を、摩擦系の階層性を考慮して進め、以下の研究により摩擦則はスケールに依存することを示した。 i) 現実の巨視的な表面では、どのように滑らかに見えても、高精度でみれば凸凹しており、界面を校正する二つの表面の凸(アスペリティと呼ばれる)同士が凝着することにより摩擦が発生すると考えられている。数百万個の原子からなる系の分子動力学法シミュレーションにより、一つのアスペリティからなる系での最大静摩擦力のサイズ依存性を明らかにし、これより一般にはアモントン則は成り立たないことを示した。ii) しかし現実的な、高さに分布のある多くのアスペリティを有する一様な系では、アモントン則が成り立ち、さらに表面が自己相似的な場合に静摩擦係数の表式を解析的に得た。これはrandomly rough surfaceの理論を用いたことによる成果であり、現実の多くの表面が示す自己相似性がなり立つ場合にも当てはまる。iii)しかし、巨視的な系では自発的に発生する系内部の不均一性のため、最大静摩擦力以下の外力下でも前駆滑りが起こり、これにより再びアモントン則は破れる。 II. アスペリティ間の凝着の熱活性化過程の詳細な研究から、滑り速度が0となる極限で摩擦力が0となる場合があることを示した。
これらの成果をスロー地震と通常の地震の発生機構の違いの解明に繋げるべく、研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定の計画のうち、研究実績概要に記述したものは上記の様な成果を上げている。 他のものについても、成果を上げるべく順調に準備を進めている。 粉体の実験については、装置の改良、および得られたデータの安定性を得るために時間を要しており、やや進展が遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
I. 上記IIの成果をアスペリティのサイズ分布を考慮した場合に広げ、実際の断層面で有効な摩擦則の導出を行う。
II. 上の摩擦則を取り入れた粘弾性体モデルとスプリングーブロックモデルの特徴を明らかにし、それをもとに、特にパラメーターを外から制御すること無しに自発的にスロー地震と通常の地震を起こすようなモデルを開拓する。
III. 水分を含んだ粉体のレオロジー特性、摩擦特性を明らかにする。
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