研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05424
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40311518)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フェニレフリン生合成 / タンパク質工学 / 酵素反応 / 非天然型機能分子 / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,天然生合成経路を模倣し,既存の酵素を改変することによって脱炭酸反応,β位水酸化反応,メチル化反応の3段階の反応を経てm-Tyrから非天然型機能性分子フェニレフリンを創製することを目的とする.そのため,平成29年度に第1段階の反応を触媒する脱炭酸酵素TDCとDDCの基質の特異性と反応性の精密的な解明を行った.調製はまだ確認されていないブタ由来の DDCについて参考文献に従い調製したが,可溶化には問題があった.そこで,発現ホストとベクターの変更や,培養条件の検討を行うことで,DDCの大量発現・精製ができた.TDC-PLPとDDC-PLP-阻害剤の構造比較に基づいた両酵素の変異体を作成し,HPLCを用いて活性を測定した結果,DopaとTyr基質認識に重要な残基の特定に至った.しかし,m-Tyrを特異的に認識する変異体を見つけられなかったため, TDC-PLP-基質アナログの複合体構造がやはり必要であるとの結論が出た.そこで,反応が進まず,且つ基質認識に影響のない変異体TDC(H203F)を用いてTDC-PLP-基質の結晶化を行ったところ,3.5Åの分解能での構造解析に成功した.得られた構造は反応前の基質とTDCの結合状態であり,これらの結果に基づいて,さらなるTDCあるいはDDCの変異部位の改良計画を立てた. 第2,3段階の反応を触媒する酵素の候補選抜については,ヒト由来のHuDβHとHuPNMTをフェニレフリンの生合成経路のβ位水酸化反応,メチル化反応を触媒する酵素の鋳型として改変計画を推進するため,HuDβHとHuPNMTの大量調製と活性測定を行った.その結果,HuPNMTの大量調製に成功し,HuPNMTがノルフェニレフリンに対する活性を有することが分かり,第3段階の触媒酵素として確定した.HuDβHについて,大腸菌と酵母を用いて発現を試みたが,不溶化のため難航している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年は、研究計画の通りに、非天然型アドレナリン作動薬の選択的生合成経路の第1段階の反応を触媒する酵素を創製するため、脱炭酸酵素(TDC, DDC)の変異体を解析しながら,基質認識機構の解明を進めた。m-Tyrを特異的に認識する変異体を設計するため,TDC変異体H203Fを用いて,基質結合との複合体TDC(H203F)-PLP-Tyrの構造を3.5Åの分解能で決定し、反応前の基質配置を明らかにした。得られた構造は、酵素改変の設計の基盤情報となり、今後の酵素創製のための酵素改変ストラテジーを明確に立てることができた. また、第3段階反応におけるメチル化酵素について、in vitroの実験により,候補のHuPNMTが確定でき,その後、HuPNMTの変異によってノルフェニレフリンに対する活性がより高いメチル化酵素の創製を進めることができた。 以上の結果から、本研究はおおむねに順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の申請書に記述している研究計画に従って,研究を進めると同時に,平成29年度の結果から、分かった問題について,次のような研究の推進方策を立てた. 1.第1段階の脱炭酸酵素(TDC/DDC)のm-Tyrに対する反応効率の向上:H29年度に得られたTDCの複合体構造H203F-PLP-TyrとDDC構造の比較により選択した残基について,TDCとDDCの両方の変異体を作製し,活性測定を行う.その結果に基づき,反応効率のよい変異体を確定する. 2.基質の認識残基の変異による第3段階反応を触媒する酵素の創製:H29年度に選出した第3段階のメチル化反応を触媒する酵素の候補であるHuPNMTについて,変異体を設計する際に,構造レベルのシミュレーションを導入する. 3.第2段階反応を触媒する酵素の候補確定と創製:大量調製に難航しているHuDβHについて,DNAの全合成を利用して発現を試みる.また,ウサギ由来のRbDβHの発現も視野に入れる.同時に,既知の構造を用いた構造レベルのシミュレーションによって,変異残基を設計する.
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備考 |
本研究には,プレリミナリーな結果が得られ、論文する前に、研究成果をwebページに公開することができないが、私たちの研究活動を研究室のホームページに掲載している。
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