本研究は,天然生合成経路を模倣し,既存の酵素を改変することによって脱炭酸反応,β位水酸化反応,メチル化反応の3段階の反応を経てm-Tyrから非天然型機能性分子フェニレフリンを創製することを目的とする.そのため,平成29年度に得られた結果に基づいて,研究を進めた. 第1段階の反応を触媒する脱炭酸酵素について得られた三つのTDC構造(TDC-PLP, TDC-PLP-CarbiDOPA(阻害剤),TDC(H203F)-PLP-mTyr)とDDC-PLP- CarbiDOPA構造の比較を行った.TDCとDDCでは,基質のp とm位のOHに直接結合する残基の違いだけではなく,異なったPLPとの結合残基も基質との結合に影響があることが分かった.その結果に基づいて,TDCとDDCの両酵素とも変異体を作成した. 第2段階反応を触媒する酵素についてラット由来RbDβHの大腸菌と酵母を用いて発現を試みたが,不溶化でした.さらに,RbDβHのDNA全合成を利用して,大腸菌での僅かの可溶化発現ができたが,活性測定できるレベルのサンプル調製に辿り着けることができなかった.今後,β位水酸化反応反を触媒する酵素をもっと広い範囲探索する必要がある 選択した第3段階反応におけるメチル化酵素HuPNMTについて,酵素の変異によってノルフェニレフリンに対する活性がより高いメチル化酵素の創製を試みた.基質p-位の水酸基に近い残基V53,V53,M258,V272に注目して,幾つかの変異体を作成した結果,特異性が変化する傾向が見られたが,予想している効果が得られなかった.そこで,構造レベルでの変異体シニュレーションを行ったところで,基質と直接コンタクトする残基だけでは無く,さらにもう一層の周辺残基を考慮する必要があることが分かった.in silico計算を用いて,基質と直接コンタクトする残基の動きを抑制できる周辺残基を合わせて変異を行う必要がある. .
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