公募研究
サキシトキシン(STX)生産渦鞭毛藻の出現海域は近年拡大しつつあるが、環境の変化が毒の生合成にどのような機構で影響を及ぼすか不明である。【1.生合成反応の場の解明】今年度はマウスに免疫して得られた抗SxtAペプチド抗体を用いて渦鞭毛藻Alexandrium tamarense有毒株の細胞を免疫染色した。ウサギ由来とマウス由来のシグナルが一致したことからこれらの抗体によるシグナルがSxtAによるものではないかと推定した。【2.新たな生合成酵素の探索】チミジンアナログによって渦鞭毛藻A. tamarenseの細胞増殖と毒生産が抑制されることを見出したことから、構造内にエチニル基を有するチミジンアナログを作用させた細胞にClick反応により蛍光標識を導入し共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。DNAに取り込まれたもの以外に細胞表層の球状オルガネラの周囲に結合成分があることが明らかとなった。 このシグナルは抗SxtA抗体及び抗SxtG抗体のシグナルとは一致せず、生合成反応の場が反応ステップによって異なることが示唆された。【3.時間軸を考慮した生合成・代謝の解析】渦鞭毛藻のSTX関連化合物への安定同位体標識硝酸ナトリウム由来15N取り込み挙動を観察するメタボロミクス手法を確立した。チミジンアナログはグルタミン酸からオルニチンの間で生合成系を抑制していることが示唆された。また取り込み率の異なる集団のうち、最も取り込み率の高い集団のみ抑制されていたことから、この集団は新生アミノ酸から生合成されたものであり、やや取り込み率の低い集団は蓄積されていたアミノ酸や中間体が生合成の場に輸送された後に生合成されたものではないかと推定した。本研究では環境変化に応答した渦鞭毛藻のサキシトキシン生合成の変化を解析するための基盤技術を開発した。今後アミノ酸や中間体の輸送とSTX生合成について展開する。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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