研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05428
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅井 禎吾 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60572310)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 天然物化学 / 生合成 / 二次代謝物 / 異種発現 / 生合成リデザイン |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代シーケンス解析によりゲノム情報を取得した菌およびデータベース上の遺伝子情報とゲノムDNAが入手可能な5属の糸状菌のジテルペノイドピロン化合物群の生合成経路の全容を解明することを目的として行った。ゲノムマイニングにより、5属の菌 (Fusarium属、Macrophomina属、Colletotrichum属、Metarhizium属、Arthrinium属) のゲノム上にジテルペノイドピロン類生合成遺伝子クラスターを見出し、全ての生合成経路を麹菌内で再構築した。作製した形質転換株が作製する全てのジテルペノイドピロン類を単離構造決定することで、全ての経路に関わる遺伝子の機能を解明し、生合成経路の全容を解明した。ジテルペノイドピロン生合成経路に見られる修飾酵素の機能を明らかにすることで、3回の酸化と1回おn還元反応を触媒するユニークな酵素の発見にも繋がった。次に生合成経路の全容解明で得られた知見をもとに、ジテルペノイドピロンの生合成経路をリデザインした。それにより、天然の経路では生産されない多様な新規ジテルペノイドピロン類を創出可能な人工生合成経路の構築に成功した。また、それらの経路で作られるジテルペノイドピロン類に関しては、全て単離構造決定し、15種以上の新規ジテルペノイドピロンの取得に成功した。現在、本研究で得られたジテルペノイドピロン類に関しては、抗菌、抗真菌、抗ウイルス活性に加え、各種ヒトがん細胞に対する活性試験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
糸状菌のジテルペノイド生合成経路の全容を解明し、その経路を人為的に再編成することで多様な非天然型二次代謝物を生産する系を確立することができた。その成果は、第59回天然有機化合物討論会や第138回日本薬学会年会で発表した。当初の予定では、初年度で生合成経路の全容を解明し、2年目でその経路のリデザインを行う予定であったが、順調に研究が進展したため、2年目に計画していた内容も達成することができた。現在、作成したジテルペノイドピロン類の薬理活性を評価している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに糸状菌のジテルペノイドピロン類の生合成経路の全容を解明し、その経路を人為的にリデザインすることで、天然には存在しないジテルペノイドピロンを生合成させることに成功した。今後は、糸状菌の他の経路と融合させることでさらに多様な新規ジテルペノイドピロンの人工生合成経路を構築し、ジテルペノイドピロン類のケミカルスペースを拡充する。また、現在評価中のジテルペノイドピロン類の中で、有望な活性を示すものが存在した場合、その化合物の構造的特徴をさらに拡張させることが可能な経路を構築し、活性の向上を計る。 本提案は、ジテルペノイドピロン類の生合成経路の再構築と再設計に加え、トリテルペン類の人工代謝経路の構築とRipps生合成マシナリの開拓を提案している。そのため、トリテルペンとRippsの研究を重点的に進めていくことを予定している。
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