糸状菌の細胞融合を用いてゲノムシャッフルによる二次代謝産物の生合成マシナリーを改変することにより、非天然物を創製することにした。まずはモデル実験として、麹菌Aspergillus oryzae NSAR1株と、栄養要求性株A. oryzae ΔpyrG株またはA. oryzae ΔadeB株を用いて細胞壁を取り除いたプロトプラストを作成後、PEG法を用いて細胞融合を行った。得られた細胞融合推定株5株に対して、培養物を分析したところ、残念ながら、特に新しい二次代謝産物が得られることはなかった。また、同様の手法を用いて、ペニシリウム属P. islandicum Sopp NBRC 6964株とP. rugulosum Thom NBRC 6965株を用いて細胞融合を行った結果、表現系が親株とは異なる細胞融合推定株5株が得られた。 一方で、PEG法を用いた細胞融合と比較すると、電気パルスによる細胞融合の方が、融合率や、再現性、および操作の簡便性に優れているために、エレクトロポレーションを用いた細胞融合も検討した。使用する菌としては、放線菌のKitasatospora purpeofusca、Streptomyces bottropensis、S. avermitilisをそれぞれ用いた。表現系が親株とは大きく異なる菌株は得られなかったものの、代謝産物が異なった菌株が得られた。現在、代謝産物のプロファイルについての再現性を見ているところである。また、薬剤耐性株に対しても同様の操作を行う予定である。さらに、枯草菌Bacillus subtilisとB. mojavensisを用いた細胞融合も行った。こちらについては親株とは異なる融合株が得られたかどうかを調べているところである。
|