多種多様な構造を持つテルペノイドは、テルペン環化酵素により基本骨格構築がなされており、その閉環反応機構の解明は分子多様性解明の鍵となる。しかしながら、酵素内部での複雑な連続多段階反応のため、中間体の単離や反応機構の全容解明は実験科学のみでは困難である。 計算化学は実則困難な化学現象を解明できるポテンシャルを秘めている。本研究では、異なる数種のテルペノイドの環化反応の理論解析を通して構造多様性創 出の原理(反応経路、選択性発現機構など)を明らかにし、実験化学者との共同研究を通じて遷移状態制御により新規セスタテルペン骨格構築への発展を目指している。 テルペン閉環反応は複雑な連続する多段階反応であるため、遷移状態・中間体構造の正確な予測が困難である。本研究では、まず、セスタテルペンSesterfisherol、Quiannulatene、Astellatol を取り上げ、理論計算を用いて閉環反応経路の網羅的探索を行った。取得した全ての遷移状態・中間体構造に対し、電荷解析、軌道解析などを行い、反応駆動力、カチオンの反応性、立体・化学選択性について定量的に評価した。セスタテルペンの閉環反応は、共通の中間体を分岐点とし、各生成物へと分化していくと考えられてきた。そこで、各閉環経路を理論解析により比較することにより、反応経路の分岐点と閉環反応への酵素の寄与について情報が得られた。これらについて、実験化学者の方々との共同研究を通じて、その裏付け研究を進めて行く。
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