研究実績の概要 |
酵素 SfmC による多環性骨格構築と官能基を変換する化学合成を融合させたハイブリッドプロセスを開発した。まず,①酵素の簡便な調製法を確立し,②酵素に受容される非天然型基質群を設計・化学合成して,基質の構造と酵素活性との相関を把握した。天然型基質では,酵素反応に必須な長鎖脂肪酸がアミド結合で連結しているため,酵素反応後にアミド結合を切断することが困難であった。そこで,長鎖脂肪酸部位を確実に切断し,1位側鎖の官能基が異なる三系統のアルカロイドを自在に迅速合成するため,アミドの代わりにエステルやアリルカルバメートを導入した基質群を設計した。簡便に化学合成した設計基質群に酵素 SfmC を作用させ 7 連続反応を進行させた後,同じ反応容器内でシアノ化した。更に,③不安定な中間体を単離せずにそのまま N-メチル化する手法を開発し,適切に官能化された五環性母骨格を僅か一日で再現性良く合成することに成功した。④非天然型基質群に組み込んだエステルやアリルカルバメートを活用して脂肪酸側鎖を除去した後,2-3段階の化学変換を施し,制ガン活性を有するアルカロイド群[サフラマイシンA, ジョルナマイシンA, サフラマイシン Y3 の窒素保護体]を系統的に迅速合成できることを実証した。本研究で開発した化学―酵素ハイブリッドプロセスにより,シンプルな基質群から僅か 4-5 ポットの変換で,多数の官能基を持つ複雑な多環性アルカロイド群を作り分けられるようになった (J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 10705.)。
|