研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05439
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤橋 雅宏 京都大学, 理学研究科, 助教 (10397581)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 結晶構造解析 / テルペン合成酵素 / ピロリン酸 / リン酸化酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、特徴的な反応を触媒する2つの新規酵素、無機ピロリン酸(PPi)を用いてイノシトールをリン酸化する酵素PPi-IKや、炭素数25個以上のテルペンをプレニル二リン酸から合成する酵素BalTSについて、それぞれの立体構造を決定し、活性の鍵となる部分を見いだす。その情報を基に、関連する新しい酵素のマイニングや、テーターメード改良による「天然にない化合物の合成」ならびに「希少な生合成物質の安価な生産」を目指している。 PPi-IKについては、リン酸基受容体イノシトールならびにリン酸基供与体PPiのアナログ基質と、PPi-IKの三者複合体の結晶構造を決定した。これによりPPi-IKのピロリン酸利用機構とそれに必要な5つの残基(2つのアルギニン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン)を明らかにした。PPi-IKを含むリボキナーゼファミリーには多数の酵素が含まれるが、リボキナーゼのうち上述の5残基を含む酵素はPPiを利用する型の酵素であると考え、BLASTで検索したPPi-IKと一次配列が似た酵素のなかからこれらの残基を含む酵素を選んで発現精製と活性測定を行ったところ、選んだ酵素はPPiを利用するリン酸化酵素であることを示した。この成果を文献(Nagata, R. et al. 2018)にまとめた。 BalTSについては基質非結合型の構造を詳細に分析し、基質結合ポケットを特定した。BalTSはこれまでのテルペン合成酵素とは全く異なる型の、アスパラギン酸に富む配列を基質認識に用いていることがわかった。この成果を文献(Fujihashi. M. et al. 2018)にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年12月に、BalTSの基質結合体を得るために調製したBalTSと基質混合溶液の結晶に、結晶が含まれていないことが明らかになったことにより、研究の進捗が予定より遅れてしまった。このため、基質非結合型の結晶構造を詳細に分析することで、BalTSの反応触媒機構を検討し、その結果を論文(Fujihashi M. et al. 2018)にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
PPi-IKについては、リン酸基受容基質の改変を目指す。対象酵素の立体構造を参考に、設計を行う計画である。 BalTSについては、引き続き基質結合体の結晶構造決定を目指すとともに、部位特異的変異の導入による機能解析を目指す。
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