研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05442
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関 光 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30392004)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物セスキテルペノイド / 生合成 / セスキテルペン環化酵素 / シトクロムP450モノオキシゲナーゼ / 組換え酵母 |
研究実績の概要 |
1)Guaianolide Sesquiterpene Lactones(GSL)生合成経路の再構築:Guaianolide Sesquiterpene Lactones(GSL)は、5員環-7員環-ラクトン環が縮合した基本構造を持つ植物セスキテルペノイドの一グループであり、抗ガン剤として使用されるArglabinなどを含む。本研究の目標の一つとして 「組換え酵母内でのGSL生合成経路の再構築」 を目指す。平成29年度中に、シナジンコウの公開RNA-seqデータのアセンブルとセスキテルペノイド生合成が活発な時期および部位において顕著に発現が誘導されている6種のシトクロムP450モノオキシゲナーゼをGSLのラクトン環形成に関わる酸化酵素の候補として選抜した。これらの酵素遺伝子をδ-guaieneを生産する組換え酵母に導入し発現させることでδ-guaieneに対する酸化活性を調べたところ3種が活性を示した。3種のうち1種について反応生成物を精製しNMRによる構造解析を行った結果、δ-guaiene の13位水酸化酵素として機能することが判明した。
2)ヨモギ属植物が生産する希少セスキテルペノイド生合成経路の再構築:特徴的なセスキテルペノイドプロファイルを示すものの、これまで詳細な解析については未着手であったArtemisia annua以外のヨモギ属植物種に着目し、新規セスキテルペン環化酵素およびその酸化酵素の探索を行い、新規あるいはレアなセスキテルペン生合成シムテムの再構築を行う。平成29年度中に、A. abrotanumおよびA. maritimaから機能未知の推定セスキテルペン環化酵素遺伝子を2種単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)Guaianolide Sesquiterpene Lactones(GSL)生合成経路の再構築:平成29年度中に、シナジンコウの公開RNA-seqデータのアセンブルとセスキテルペノイド生合成が活発な時期および部位において顕著に発現が誘導されている6種のシトクロムP450モノオキシゲナーゼをGSLのラクトン環形成に関わる酵素の候補として見出した。これらの酵素についてδ-guaieneに対する酸化活性を調べたところ3種が異なる活性を示し、そのうち一つは13位水酸化酵素として機能することが判明した。さらに、Thapsia属植物といったシナジンコウ以外のGSL産生植物からも新規の候補P450の探索を行い、3種の候補P450を得た。これらも同様にδ-guaieneに対する酸化活性を示すことが判明した。
2)ヨモギ属植物が生産する希少セスキテルペノイド生合成経路の再構築:平成29年度中に、A. abrotanumおよびA. maritimaから機能未知の推定セスキテルペン環化酵素遺伝子を2種単離した。これらがコードするタンパク質はこれまでにA. annuaから単離されているセスキテルペン環化酵素に対して33%~64%のアミノ酸配列同一性を示すことから、これまでにヨモギ属植物から単離されているセスキテルペン環化酵素とは異なる酵素活性を示すものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1)Guaianolide Sesquiterpene Lactones(GSL)生合成経路の再構築:シナジンコウから選抜した6種のP450のうち3種がδ-guaieneに対する酸化活性を示し、そのうち1種は13位水酸化活性を示すことが判明した。しかしながら残り2種のP450については反応生成物の構造が未確定である。さらに、Thapsia属植物由来の3種にP450についてもδ-guaieneに対する酸化活性を示した。そこで、これらの構造未確定の反応生成物について反応生成物の分離・精製ならびにNMRによる構造決定を行う。さらに、別のGSL産生植物であるパチュリーの公開RNAseqデータからも新規の候補P450の探索を行うと同時に、δ-guaieneに対する酸化活性を示した上記のP450についてδ-guaianoic acid に対する酸化活性の有無を調べ、δ-guaianoic acidを基質としてラクトン環形成を触媒するか否かを解析する。
2)ヨモギ属植物が生産する希少セスキテルペノイド生合成経路の再構築:平成29年度中に、A. abrotanumおよびA. maritimaから機能未知の推定セスキテルペン環化酵素遺伝子を2種単離した。これらがコードする酵素の活性を調べるため、セスキテルペン環化酵素の基質であるファルネシル二リン酸(FDP)を高生産する酵母株に遺伝子を導入し、FDPに対する酵素活性の有無を調べる。酵素活性が検出された場合は反応生成物の構造解析を行う。さらに、これらの種からの推定セスキテルペン酸化酵素の単離を行う。
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