研究実績の概要 |
Dihydroxynaphthalene(DHN)メラニンは、1,8-DHNが酸化的重合した茶褐色の高分子であり、主にカビが生産する。1,8-DHNの生合成酵素群は、真核微生物に特異であると考えられている。しかしながら、粘液細菌Sorangium cellulosum由来のsoceCHS1を含むオペロンの異種発現を行い、このオペロン(bacterial DHN synthaseオペロンと命名)が1,8-DHN合成酵素群であることを我々は明らかにしていた。今回我々は、bdsオペロンのBdsAおよびBdsBの機能解析を行った。 Bds合成酵素の組換えタンパク質を調製し、in vitro反応を行った。SoceCHS1は、malonyl-CoAからT4HNを与えた。BdsAは、NADPH を補酵素としてT4HN、T3HNからそれぞれscytalone、vermeloneを与えた。scytaloneの絶対立体配置は、旋光度よりR体であると決定した。また、scytaloneの光学純度は>99.5%であった。さらに、反応速度論解析の結果、BdsAのKmは95 μMであり、kcatは0.1 sec-1であった。BdsBは、(R)-scytalone、(R)-vermeloneからそれぞれT3HN、1,8-DHNを与えた。反応速度論解析の結果、BdsBのKmは5.5 μMであり、kcatは4.9 sec-1であった。 カビのDHN合成酵素と細菌のBds合成酵素は以下の点で異なる。ポリケタイド合成は、カビではモジュール型のI型PKSであるが、細菌では単独型のIII型PKSである。T4HNの還元反応は、カビのHNRはSDRスーパーファミリー(SF)であり、BdsAはAKR SFであり、両者は全く異なる。Scytaloneの脱水反応は、カビのSDと細菌のBdsBは共にNTF2-like SFである。
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