研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05449
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
藤井 勲 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (70181302)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電子環化酵素 / 糸状菌 / 生合成 |
研究実績の概要 |
二次代謝産物生合成における電子環化・付加反応を触媒する酵素の機能解析と構造解析を目的として、本年度は特にshimalactone生合成の鍵反応であるpreshimalactoneの酸化酵素と考えられるShmBの異種発現について重点的に検討した。ShmBは、N末側にFAD結合部位を有し、C末には膜貫通領域の存在が予測された。そこで、大腸菌に至適化した全長shmB cDNAを合成し、N末His-tag、C末His-tag、および膜貫通部欠失体として E. coli BL21(DE3)などで発現させた。全長ShmBでは可溶性と不溶性がほぼ等量であったが、可溶性発現を期待した膜貫通領域欠失体はほとんどが不溶性であった。また、フラビンのコバレントな結合のため、メタノール資化酵母Pichia pastorisや分裂酵母Schizosaccharomyces pombeなどの真核生物を宿主としたShmBの菌体内発現、菌体外発現系やAspergillus oryzaeでのShmB発現を行い、酵素液を調製して、preshimalactoneの変換反応を検討した。 上記の発現系より調製したShmB酵素液を用いて、酵素活性の検出について検討した。基質であるpreshimalactone自身が不安定であるため、中性条件下でincubationを行い、反応液をHPLCで分析した。残念ながら、ShmBを発現させた大腸菌可溶性画分、P. pastris、S. pombeの粗酵素液、A. oryzae/shmBの粗酵素液、ミクロソーム画分などについて検討したが、preshimalactoneの減少は認められるものの、コントロール反応でもpreshimalactoneは減少し、かつそのバラツキが大きいため、ShmBの活性を確認することはできなかった。また、減少に伴う新たなピークの出現も認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
shimalactone生合成遺伝子のうち、ポリケタイド合成酵素遺伝子shmAとFAD依存型モノオキシゲナーゼ遺伝子shmBのみをAspergillus oryzaeで異種発現させることにより8π-6π閉環反応が進行した最終産物であるshimalactoneが生成することから、本生合成反応においてはShmBの触媒する反応とその生成物の同定が8π-6π電子環化反応を含む生合成機構解明の鍵となると考え、ShmBのin vitroで酵素機能解析を目的として、ShmBの異種発現と酵素活性の検出に重点をおいて研究を進めた。その結果は、活性型としてShmBの発現に成功したとはいえない状況に止まっており、また、その酵素活性の検出方法についてもHPLCを用いて種々検討したものの、ShmBの基質と考えられるpreshimalactone自体が不安定な化合物であることから活性検出系を確立するには至っていないのが現状である。 また、ShmBの発現系構築と解析を重点的に行ったため、ソラノピロン合成酵素Sol5の構造解析、phomopsidin生合成のDiels-Alderaseの検索についてはほとんど進展させられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①shimalactone生合成の8π-6π閉環反応を触媒する酵素の解析 Emericella variecolor GF10株のshimalactone生合成中間体preshimalactoneを基質として、in vitroで生合成反応の再構築をまず試みるべく、昨年度はShmBタンパクの大腸菌、酵母、麹菌などを宿主として発現を試みたが、活性タンパクとして確認することができなかった。そこで、ShmBの新規発現宿主として、酵母Kluyveroyces lactisやタバコ培養細胞を用いて、フラビン化された活性タンパクとしての発現とその精製を試みる。これをpreshimalactoneを基質として反応させ、変換の有無、変換物の単離同定、次段階への進行状況の解析を行い、予想した反応スキームで進行するかどうかを確認する。8π-6π閉環酵素と想定しているShmGは、6回膜貫通タンパクと推定されることから、酵母や麹菌などで発現させたミクロソーム画分で活性の検討を行い、可溶化、精製についても検討する。 ②ソラノピロン合成酵素Sol5の構造解析 ソラナピロン合成酵素Sol5の大腸菌発現系ではFADが結合した活性型が得られなかったため、ShmBと同様に酵母K. lactisやタバコ培養細胞を用いた発現系を検討する。精製に有効なタグを付加し、活性型としてSol5を得ることができれば、その大量調製、精製を行い、結晶化、構造解析へと進める。 ③phomopsidin生合成のDiels-Alderaseの検索 phomopsidinの生合成については、生産菌ゲノム中に見出したPKS-NRPSとそれと協働するDiels-Alderaseについて、麹菌共発現系を構築を進め、その生産産物を解析することにより、phomopsidin生合成遺伝子の同定を試みる。
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