二次代謝産物生合成における電子環状化・付加反応を触媒する酵素の機能解析と構造解析を目的として、本年度はポリケタイド合成酵素ShmAおよびShmAが生産するpreshimalactoneの酸化酵素ShmBについて酵母での異種発現系の構築を中心に研究を進めた。 糸状菌E. variecolorの遺伝子であるshmAはイントロンを持つことから、shimalactoneを生産する麹菌のshmA、shmB共発現形質転換体より、shmAのmRNAを調製し、イントロンが1ヶ所であることを確認した。同様にshmB cDNAも取得し、これらを酵母発現ベクターに導入した。まず、PKS発現用宿主Sc BJ5464-npgAでのshmA発現を試みたが、preshimalactoneの生産は認められなかった。その原因として、A. nidulans由来のnpgAがShmAを認識しない可能性を考え、ShmAが発現しているA. oryzaeよりそのphosphopantetheine転移酵素遺伝子を検索し、npgAと45%相同性を示すapt遺伝子を見出した。次いで、Sc BJ5464株でshmAとaptを共発現させて、5’-UTR配列、プロモーターなど種々の検討してpreshimalactoneの生産を検討したが、確認するには至らなかった。 一方、preshimalactone oxideが酸性条件下にエポキサイドが開環すると考え、この中間体から非酵素的にshimalactoneが生成するかどうかについて、東京大学薬学系研究科の内山教授との共同研究を行い、計算化学的に進行可能であることを明らかにした。 また、ShmBおよびソラナピロン合成酵素Sol5のタバコ培養細胞での発現についても検討し、遺伝子導入株を取得と発現の確認を進めている。
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