未決定であったミンナミドA脂肪酸部の立体構造決定を行った。ミンナミドAの部分酸加水分解により得られた脂肪酸部から、2種の環状エーテル誘導体を調製し、1H NMRの結合定数と NOESY相関の解析により、2個の2級メチル基(C5位およびC13位)の立体化学を決定した。残るC9位の第2級メチル基の立体化学を決定するため、脂肪酸部の9位に関する可能な2種のジアステレオマーを合成した。1H NMRの比較により、C9位の立体化学をSと決定することができ、これにより、ミンナミドAの絶対立体構造を完全に決定することに成功した。さらに、ミンナミドAの細胞毒性発現機構に関する研究を行い、ミンナミドAが誘導する細胞死には、銅イオンが関わる過酸化脂質の蓄積が関係していることがわかった。 ミンナミドを産生するシアノバクテリアOkeania hirsutaの実験室における培養を検討するため、必要な生のシアノバクテリアを採集するべく、本年度も沖縄県水納島へ出かけ採集を試みたが、目的のシアノバクテリアを見つけることができなかった。前年度に同じユレモ科のシアノバクテリア (Moorea bouillonii)をモデルに用いて、ゲノム抽出法を確立したので、極少量だけ保存してあったOkeania hirsutaについてゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAは微量であったが、純度が良いものが得られたことが確認できたので、次世代シークエンサーによる配列解析を行った。解析を進めているが、現在のところ、ミンナミドAの生合成遺伝子クラスターの発見には至っていない。
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