研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05455
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 俊二 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, ユニットリーダー (30311608)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テルペノイド / 放線菌 / 生合成プラットフォーム |
研究実績の概要 |
放線菌は、構造多様性を持つ有用二次代謝物を高生産する能力を有するためテルペノイド化合物への応用利用が期待されているが、大腸菌や酵母のような実質的な高生産システムの開発には至っていない。本研究では、メバロン酸経路を直接制御する転写制御因子とプロモーターセットを内在する放線菌 (Streptomyces reveromyceticus)を活用し、遺伝子発現時期が異なる一次・二次代謝生合成遺伝子の全てを同調的に機能させることにより、テルペノイド高生産に特化した生合成プラットフォームを構築すること、さらに、この基盤を活用し機能未知の遺伝子クラスターから生合成される新規二次代謝産物を取得することを目的とした。全RNA発現解析を行い、様々な発現パターンを示すプロモーター(Pint)をフラキノシン(FQ)生合成遺伝子クラスターの転写制御因子(Fur22)に連結したPint-fur22を構築し、FQ生産を指標(褐色コロニーとなるため生産判断が容易)に二次代謝生合成とのリンクを検証した。当初の予想に反して、恒常的に高発現しているプロモーターを連結した場合では効率的な代謝リンクを達成できないことが判明した。そこで、二次元電気泳動により、対数増殖期、定常状態で発現しているタンパク質発現を経時的に解析し、その挙動をカタログ化した。さらに、一次・二次代謝リンクに関わる内在プロモーター探索を行い、ボツリオコッセン生産への応用を検討したところ、約0.2g/Lの生産量を達成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次元電気泳動後の各スポットの同定をMALDI-TOF/MS解析により行い、特徴的な発現挙動を示すタンパク質をコードする遺伝子からプロモーター領域を増幅し、転写制御セット(Pint-fur22)を構築した。FQ遺伝子クラスター内に組み込まれているメバロン酸生合成遺伝子群は、Fur22により正に制御されるプロモーター(PMAV)を有する。そこで、PMAV下流に標的のテルペノイド一次・二次代謝生合成遺伝子を導入することによって、全遺伝子が、代謝リンクプロモーター (Pint)とFur22により一括して同調制御されるPint-fur22-PMAVシステムを構築した。代謝リンクプロモーター(Pint)の検証は、FQ生産を指標として行った。二次元電気泳動によりタンパク質発現を経時的に解析し、一次・二次代謝リンクに関わる内在プロモーター探索を行い、ボツリオコッセン生産への応用を検討した。その結果、約0.2g/Lの生産量を達成することに成功している。また、フラックス解析、ターゲットメタボローム解析も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度のプロテオーム解析、プロモーター探索により取得した、代謝リンクプロモーター(Pint)を用いて全テルペノイド生合成遺伝子群の同調制御システムの高度化を進める。解糖系に由来する前駆体を利用する非メバロン酸経路にも着目し、全遺伝子がPint-fur22-PMAVシステムで駆動されるように人工オペロンを構築する。また、acetyl-CoAからmalonyl-CoAの生産制御は、解糖-メバロン酸経路の重要なリンクであるため、acetyl-CoA carboxylase複合酵素系がPint-Fur22-PMAVで制御されるオペロンを構築する。 フラックス解析、ターゲットメタボローム解析による鍵代謝酵素同定、酸化還元バランス検討から、最適化候補に挙がった炭素利用経路に着目する。機能欠損および律速酵素の遺伝子発現増強により代謝フラックス最適化を行い、テルペノイド化合物高生産を検討する。
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