物理学から生物学まで、広い分野で応用されている光圧は遠方場から近接場へとその舞台を変えつつある。その中で、局在プラズモン共鳴(LSPR)はナノ物質輸送への応用が期待されている。本研究では、複数のプラズモン導波路を利用したリモート励起多機能光トラッピングを新たに提案する。導波路を伝わる伝搬プラズモンにより導波路先端でLSPRを励起(リモート励起)し、複数の導波路を交互にON/OFFすることによってLSPR位置をnmレベルで動的に制御する方法を新たに開発する。さらに、nm領域でトラップされている物質輸送の様子を、光学顕微鏡で観測する手法を新たに提案・開発することを目的とした。 本研究では、プラズモン導波路としては、化学的に合成した減衰係数の低い径100ナノメートル、長さ10から20 マイクロメートル程度の銀ナノワイヤーを用いた。近赤外フェムト秒レーザー光をプラズモン導波路に伝搬させると、導波路上を光が伝搬している部分では3次の非線形現象である4波混合が優先的に起こり、導波路の端では2次の非線形である和収差や第2次高調波が優先的に起こることを、蛍光顕微鏡を駆使することで実験的に証明した。この現象を利用し、 2次の非線形光学現象である和収差に共鳴する量子ドットは導波路の両端のみにトラップされるが、3次の非線形現象である4波混合と共鳴する量子ドットは導波路全体にトラップされることを見出した。これにより、非線形光学現象によって、光トラップの場所依存の制御の可能性を初めて示唆した。
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