研究領域 | 光圧によるナノ物質操作と秩序の創生 |
研究課題/領域番号 |
17H05463
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
花崎 逸雄 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (10446734)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ブラウン運動 / 時系列データ解析 / ナノ粒子 / 集団挙動 / クラスター / 結晶化 / 構造 / 秩序 |
研究実績の概要 |
特定のモノに限定されない普遍的なコトを扱う現代の統計力学の切り口から,多様な現象を取り扱うための具体的な計測データ解析の方法論を研ぎ澄ませてきた.それを最大限に活かしながら,本研究の対象である光圧にさらされた流体中に漂う微粒子群が示すブラウン運動と共存した秩序を明らかにするために,顕微鏡動画データ解析を実施し始めた.光圧にまつわる研究は世界中で多くの研究者が取り組んでいるが,光圧を駆使した結果として流体中のナノ粒子群にどのような挙動の変化が現れるのかについては,実はあいまいなことが数多く残されたままである.それゆえ,初年度はできるだけ基礎的な特性に注目し,ナノ粒子が示すブラウン運動がバルクのそれとどのように異なるのかという点を明らかにするための解析を実施してきた.また,レーザー強度次第で容易に大きく変化する特性と,意外にも影響をあまり受けない特性があるので,その点についても丁寧に吟味しているところである.光の物理に注目する視点からは,ナノ粒子の個別具体的で詳細な特徴次第で同じ光の入力条件に対していかなる光圧の違うが現れるのかということが大きな関心事の一つである.ただし,光圧に起因する力それ自体を「直接」測るというよりも,力が作用していることによって生じるナノ粒子の動力学の変化を定量的に明らかにすることによってこそ,その光圧自体への理解を深めることができるという点に留意する必要がある.そして,本研究では結果として生じる動力学の変化を計測データ解析により明らかにするため,計測条件が現実的にその変化を捉えることができるものになっているかどうかがデータ解析の成否を根柢のレベルで左右する.このような未知で不確実さの多い取り組みでありながら,初年度から光圧に誘起されるナノ粒子の挙動の変化を定量的に明らかにし始めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公募課題として本新学術領域に参画した初年度ということで,公募課題被採択者を含めた他の領域メンバーとの連携体制を構築することも重要な点であったが,これが本年度ある程度確立できた.また,実際の光圧にさらされた流体中微粒子群の顕微鏡動画データ解析を開始することができ,自明でない特性を抽出し始めている.それゆえ,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
レーザートラップ技術を専門とする研究者との連携体制をさらに円滑なものに洗練していくことがポイントである.例えば,解析対象となる微粒子群動態の広い意味での顕微鏡動画データを獲得するための実験条件の吟味により,起きている現象が本質的に同じであっても,解析の結果として特定できる事象の限界が大きく変わる.既に実際に動画データ解析を実施し始めているので,その解析結果から現時点で得られる情報について領域内の研究者達と議論することにより,専門の異なる研究者の複合的な視点を組み合わせることにより,さらなる相乗効果の研究進展を狙う.
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