同じエネルギー差で異なる形状の力場がある場合に,粒子をトラップできる時間が異なることを発見した.光圧関連技術が高度に発展してきた現在も,光捕捉における粒子の力場滞在時間は化学反応で言う遷移状態理論,あるいはアレニウス則に基づいて見積もられている.そこではエネルギー差だけが滞在時間を左右すると仮定し,力場の範囲や形状は一切考慮されない.この力場の範囲や形状を変えることにより,同じエネルギー差であっても滞在時間を変えることができる.言い換えれば,レーザーパワーを高くすること以外に滞在時間を長くする余地があるという画期的な発見である.そして,実験で得られる顕微鏡動画データ解析により,固液界面で光圧を受けるナノ粒子群が集まり形成するクラスターのダイナミクスを追究した.その結果,粒子群が示すランダムさを伴うダイナミクスはバルクの拡散とは異なり,焦点を中心とした半径方向と,それに対して水平面内で垂直な周方向とで動態が異方性を有することがわかった.しかも,クラスター内の局所的な場所に応じて明確にダイナミクスの統計的な特徴が異なることを発見した.また,時間を無限大で考えると空間的拘束により拡散係数はゼロに収束していくことになるが,有限の時間スケールで時間スパンの依存性を評価することにより,その特徴を詳しく評価することができた.特に,変位分布を拡散係数の次元に変換してから対数尺度で評価する独自の方法により,バルク拡散に相当する位置に1つのピークがあるのとは別に,それよりも大きな値にピークがもう1つ存在することを明らかにした.光圧の保存力成分による空間的拘束や壁面のごく近傍のダイナミクスであることを考慮するとランダムな運動が制限される因子が目立つが,実際には光圧の散乱力成分の影響によりナノ粒子はBrown運動を促進されてもいるということが明らかになった.
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