本研究では、2次元物質であるナノシートに着目して、レーザー光を用いた光トラッピング挙動の詳細を明らかにすること、サブミリメートルに及ぶ大きなナノシートの構造体の構築を目指して研究を行なってきた。研究の推進によって、次の2つの事柄を明らかにすることが出来た。①レーザー光を高い開口数の対物レンズで集光するとナノシートが光トラッピングできること、②コロイドとしてのナノシートの特徴である大きな排除体積の効果で、集光点のサイズを超えたナノシートの集合体を誘起できることの二つである。①については、焦点で光トラッピングされたナノシートは、レーザー光の進行方向に垂直に、偏光方向と平行に配向することを、ニオブ酸ナノシート、粘土ナノシートを用いて実験的に明らかにした。②については、レーザー光を照射するとレーザー光の焦点の外縁部の100マイクロメートルに及ぶ範囲にナノシートが年輪状に並んだ構造体が組み上がることを、ニオブ酸ナノシートを用いて明らかにした。組み上がる構造体は、コロイド溶液中のニオブ酸ナノシートの濃度が低い時には生成せず、高い際に、すなわち排除体積効果によってコロイドが液晶性を示す試料において生成が確認されたことから、光によって誘起された配向変化が排除体積効果によってドミノ倒しのように大きく伝搬することで構築することを明らかにした。以上のように、本研究では、ナノシートからなる構造体形成のために、レーザー光照射を用いるという新しいサイエンスを生み出すことが出来た。
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