研究領域 | 光圧によるナノ物質操作と秩序の創生 |
研究課題/領域番号 |
17H05468
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
許 岩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90593898)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ流体デバイス / ナノ粒子 / 光圧 / マニピュレーション / Nano-in-Nano集積化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究代表者が発見した3D ナノ空間ケージ効果に基づくナノ粒子のトラップ法に光圧力学操作を融合する斬新な方法論で、ナノ粒子に対する研究代表者が開発したNano-in-Nano 流体力学操作の限界を超えさせ、その相乗効果の究明により、液相におけるナノ粒子の複合的な操作及び大規模な配列手法を確立することである。 H29年度は、本研究の基礎となるナノ粒子に対する光圧操作手法とその基盤技術の確立に取り組んだ。具体的には、波長1064 nmの近赤外YAGレーザーを高開口数の油浸対物レンズで試料中に集光し、光圧を発生させた。バルク空間内のナノ粒子を光圧操作可能であるか確認するために、まずナノウェル基板で実験を行った。その結果は、集光点にて粒子が集合体を形成し、単一粒子操作は困難であることがわかった。また、ウェルに配置する操作はレーザーの焦点深度とウェルの高さを一致させなければならず、高度な技術を必要としたこともわかった。次に、最適化したNano-in-Nano流体力学操作の条件下で、光誘起力によるナノ粒子輸送位置制御におけるレーザー強度などの光圧力学操作の最適化条件を実験により探索した。そして、レーザー光等の実験条件をさらに最適化した上、Nano-in-Nano構造を有する基板を用いて、液相においてナノ粒子の複合的な光圧操作に成功した。さらに、挑戦的な薄いガラスのナノ流体デバイス接合技術を確立し、光圧操作に適合するナノ流体デバイスの作製にも成功した。以上により、光圧とナノ流体デバイスの融合による新しい実験手法が確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H29年度は、研究実績の概要で述べたように、光圧とNano-in-Nano流体力場の融合による液相ナノ粒子の大規模配列の基礎となる新しい実験手法の確立ができた。若干の方針の変更はあったものの、当初の目的はほぼ達成した。また、光圧新学術領域内の活発な共同研究を通じて、Nano-in-Nano構造とその3Dナノ空間ケージ効果を利用して、光圧操作とナノ流体力場を融合し、ナノ流体環境においてナノ粒子の1粒子精度・選別的・複合的な操作と精密な配置に世界に先駆けて成功した。さらに、挑戦的な薄いガラスのナノ流体デバイス接合技術を確立し、小さい光圧の威力をさらに容易に最大限まで発揮できるようにした。この薄いガラスのナノ流体デバイス接合技術は、光圧操作のみに限らず、これまで不可能であったナノ流体デバイスへ様々な技術との融合が可能となり、ナノ流体デバイスの応用を幅広く拡大することが期待される。従って、H29年度は当初計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、H29年度に確立した光圧とナノ流体デバイスの融合による新しい実験手法を用いて、本研究の基礎となる液相におけるナノ粒子の1粒子、高精度の操作・配置手法の確立にさらに取り組む。また、最適化したNano-in-Nano流体力場において、レーザー波長、強度による光誘起力とナノ粒子の性質との関係を実験により明らかにし、ナノ粒子の選択的操作・大規模配列手法の創出を図る。具体的には、基本実験手法を用いて試行錯誤実験を行い、それぞれの粒子に対する最適化のレーザー波長、強度などを探索する。試行錯誤実験で得たレーザー光の最適化条件を指針として、最適化したNano-in-Nano流体力場下において、レーザー波長、強度、出力による光誘起力とナノ粒子の性質との関係を実験でさらに明らかにし、性質が異なるナノ粒子の選択的な操作及び配列化に取り組む。
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