複合アニオンの配置自由度を利用した高機能磁性絶縁体の探索

2017 年度 実績報告書

• 研究領域: 複合アニオン化合物の創製と新機能
• 研究課題/領域番号: 17H05474
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 青山 拓也 東北大学, 理学研究科, 助教 (80757261)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: 複合アニオン / マルチフェロイクス / 極性伝導体

研究実績の概要

アニオンの複合化による磁気誘起極性現象の研究を目的とした研究を行なった．今年度は試料合成・測定系構築を主として行なった．対象物質としては梯子型鉄系化合物・鉄酸フッ化物を対象とした．
まず低温・磁場中の電気抵抗率および誘電率・電気分極の測定を行うため，同領域公募研究・南部准教授(金研)の所有するクライオスタットに挿入可能な測定プローブおよびプログラムの作成を行なった．1.8K-9Tの範囲で上記の測定が可能となった．磁性イオンとして鉄原子を含む擬一次元梯子型化合物を対象とした．溶融法によって強磁性不純物を含まない純良単結晶を育成し，上記の測定系を用いて電気伝導率および磁気抵抗効果の測定を行なった．複合アニオン化する以前の母物質において，磁気秩序に関連した極性構造相転移の存在を明らかにし，詳細を学会で発表した．アニオンを硫黄・セレンの二種類含む組成において試料を合成し，全組成において固溶し単結晶が得られることを確認した．電気抵抗および磁化を測定し，組成相図を作成した．組成相境界において量子臨界的な磁気転移温度の抑制が観測された．鉄酸フッ化物試料を同領域公募研究・岡助教(中央大)より提供いただき，磁場中の誘電率および電気分極の測定を行なった．構造相転移に伴う誘電異常を観測するとともに，低温に新たに磁気秩序に由来する誘電異常を観測した．その他，共同研究として，極性錯体の高圧圧縮挙動のX線回折実験によるその場観察，固体電解質の圧力下伝導率測定を行なった．

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

複数種類のアニオンを含む試料の合成が困難であったため．年度内に試料の合成が完了し，基礎物性を測定した．中性子回折実験を年度内に行う計画であったが，次年度に持ち越した．また，申請課題以外の共同研究を開始したため．

今後の研究の推進方策

複合アニオン化した鉄系梯子型化合物試料において中性子回折実験を行い，組成相図中の各領域における磁気構造・結晶構造の詳細を明らかにする．組成相境界における量子臨界点付近で圧力を印加することで，母相において現れる圧力誘起超伝導性がどのような影響を受けるかを明らかにする．

研究成果

• [雑誌論文] Electric-Field-Induced Reorientation of the Magnetic Easy Plane in a Co-Substituted BiFeO3 Single Crystal (2017)
  • 著者名/発表者名: Yamamoto Hajime、Sakai Yuki、Shigematsu Kei、Aoyama Takuya、Kimura Tsuyoshi、Azuma Masaki
  • 雑誌名: Inorganic chemistry 巻: 56 ページ: 15171～15177
  • DOI: 10.1021/acs.inorgchem.7b02501
  • 査読あり
• [雑誌論文] Two-phonon Absorption Spectra in the Layered Honeycomb Compound α-RuCl3 (2017)
  • 著者名/発表者名: Yoshinao Hasegawa1,, Takuya Aoyama1, Koya Sasaki, Yuka Ikemoto, Taro Moriwaki, Toshiya Shirakura, Riichiro Saito, Yoshinori Imai, and Kenya Ohgushi
  • 雑誌名: J. Phys. Soc. Jpn 巻: 86 ページ: 123709
  • DOI: 10.7566/JPSJ.86.123709
  • 査読あり
• [雑誌論文] Orbital order and fluctuations in the two-leg ladder materials BaFe 2 X 3 ( X = S and Se) and CsFe 2 Se 3 (2017)
  • 著者名/発表者名: Kou Takubo, Yuichi Yokoyama, Hiroki Wadati, Shun Iwasaki, Takashi Mizokawa, Teak Boyko, Ronny Sutarto, Feizhou He, Kazuki Hashizume, Satoshi Imaizumi, Takuya Aoyama, Yoshinori Imai, and Kenya Ohgushi
  • 雑誌名: Physical review B 巻: 96 ページ: 115157
  • DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevB.96.115157
  • 査読あり
• [雑誌論文] Anisotropic magnetodielectric effect in the honeycomb-type magnet α － RuCl 3 (2017)
  • 著者名/発表者名: Takuya Aoyama, Yoshinao Hasegawa, Shojiro Kimura, Tsuyoshi Kimura, and Kenya Ohgushi
  • 雑誌名: Physical review B 巻: 95 ページ: 245104
  • DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.245104
  • 査読あり
• [雑誌論文] Structural deformation of the S = 1 kagome-lattice compound KV 3 Ge 2 O 9 (2017)
  • 著者名/発表者名: Eigo Takagi, Takuya Aoyama, Shigeo Hara, Hirohiko Sato, Tsuyoshi Kimura, and Yusuke Wakabayashi
  • 雑誌名: Physical review B 巻: 95 ページ: 104416
  • DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.104416
  • 査読あり
• [学会発表] 梯子型超伝導体AFe2X3(A=Ba,Cs,X=S,Se)の共鳴X線散乱 (2018)
  • 著者名/発表者名: 田久保耕, 横山優一, 山本航平, 平田靖透, 和達大樹, 岩崎駿, 溝川貴司, Teak Boyko, Ronny Sutarto, Feizoh He, 今泉聖司, 青山拓也, 橋詰和樹, 今井良宗, 大串研也
  • 学会等名: 日本物理学会
• [学会発表] AFe2X3(A=Ba,Cs,X=S,Se)の電子構造II (2017)
  • 著者名/発表者名: 田久保耕, 和達大樹, 溝川貴司, Teak Boyko, Ronny Sutarto, Feizoh He, 今泉聖司, 青山拓也, 橋詰和樹, 今井良宗, 大串研也
  • 学会等名: 日本物理学会
• [学会発表] 中性子とミュオンでみた鉄系梯子型物質BaFe2Se3の動的磁性 (2017)
  • 著者名/発表者名: 南部雄亮, 鈴木謙介, 羽合孝文, 長尾道弘, 横尾哲也, 伊藤晋一, 岡部博孝, 幸田章宏, 門野良典, 今泉聖司, 橋詰和樹, 青山拓也, 今井良宗, 大串研也
  • 学会等名: 日本物理学会
• [学会発表] 第二高調波発生を用いた梯子型鉄系化合物BaFe2Se3における極性構造の探索 (2017)
  • 著者名/発表者名: 今泉聖司, 青山拓也, 富樫拓也, 佐藤佳史, 松原正和, 大串研也
  • 学会等名: 日本物理学会
• [学会発表] Kitaevスピン液体候補物質AX3(A = 遷移金属, X = Cl, I)の合成と物性 (2017)
  • 著者名/発表者名: 長谷川慶直, 青山拓也, 池本夕佳, 森脇太郎, 佐々木宏也, 今井良宗, 大串研也
  • 学会等名: 日本物理学会