研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
17H05477
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
由井 樹人 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50362281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アップコンバージョン / 層状複水酸化物 / 交互積層 / エネルギー移動 / 光学材料 / 透明膜 |
研究実績の概要 |
低エネルギーの光を高エネルギーの光へと変換するフォトン・アップコンバージョン(PUC)系、特に複数のアニオン系有機色素を用いた膜状PUC系の構築を行った。特に、有機色素の組織的配列および膜化のため、層状複水酸化物(LDH)を鋳型とする相互積層(LBL)膜の作成を行った。本年度の実績として、1) 鋳型となるLDHおよびLBL積層に必要なLDHナノシートの作成を行った。従来なAl-Zn系LDHだけでなく、レドックス活性なCoを含むLDHおよびナノシートの作成に成功している。2) 得られたLDHナノシートを鋳型とし、高分子材料であるPSSをLBL法にて積層し、斜入射小角X線散乱法にて膜の構造を解析した。3) LDHを鋳型とするLBL積層を低分子系色素へと展開し、4価のアニオン性ポルフィリン(TCPP)がLBL法にて積層できることを見出した。4) TCPP/LDHからなる膜に対しX線構造解析を行い、従来の高分子系材料とは異なる構造を有することを明らかにした。5) 典型的なPUC系色素かつLDHとの積層可能な新規色素ds-DPAの合成に成功した。以上の結果をまとめると、低分子系アニオン性色素であっても、LBL法にてLDHとの積層複合膜が作成でき、本膜が良好な透明性や光透過性を有することを確認した。以上の結果は、本研究目的である複合アニオンフォトン・アップコンバージョン膜の構築にとって有用な知見を得ることができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究成果として、1) 鋳型となるLDHおよびLBL積層に必要なLDHナノシートの作成を行った。従来なAl-Zn系LDHだけでなく、レドックス活性なCoを含むLDHおよびナノシートの作成に成功している。2) 得られたLDHナノシートを鋳型とし、高分子材料であるPSSをLBL法にて積層し、斜入射小角X線散乱法にて膜の構造を解析した。3) LDHを鋳型とするLBL積層を低分子系色素へと展開し、4価のアニオン性ポルフィリン(TCPP)がLBL法にて積層できることを見出した。4) TCPP/LDHからなる膜に対しX線構造解析を行い、従来の高分子系材料とは異なる構造を有することを明らかにした。5) 典型的なPUC系色素かつLDHとの積層可能な新規色素ds-DPAの合成に成功した。以上の結果をまとめると、低分子系アニオン性色素であっても、LBL法にてLDHとの積層複合膜が作成でき、本膜が良好な透明性や光透過性を有することを始め、本研究遂行にとって重要な知見を得ることに成功した。このことから、研究は概ね順調に進展していると考えられる。しかし、PUC用色素であるds-DPAは、従来の手法では積層ができなかった。この原因として、LBL積層に用いる溶媒に対しds-DPAが非常に良溶であるためと考えられた。本年度は、これらの改善が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究実績・進捗を踏まえ、本年度は以下の研究を同時並行的に行い、研究の進展と目的達成を目指す。1) LDHナノシート化手法、特に溶媒の探索。本研究で合成したPUC色素ds-DPAは、従来のナノシート化溶媒であるホルムアミドに非常に良溶であるためLDHとの複合化が困難であった。この点を克服するため、ホルムアミドを用いないLDHナノシートの作成を行い、LBL積層へと展開する。2) DPA色素の修飾。LBL積層に用いる溶媒に対し溶解性を低下させる置換基をds-DPAに導入することで、従来の溶媒でもLBL積層が可能な系の構築を目指す。3) ds-DPAを含む有機色素/LDH積層膜・交互積層膜の構造解析。一部の色素/LDH積層膜の構造解析は行えているが、さらなる詳細を観測するため、アニオン性色素の拡張やアニオン性色素を交互積層した膜での構造解析を行う。4) PUC用エネルギー受容分子の新規合成。PUCには適したエネルギー順位や寿命を有するエネルギー受容色素が必要である。これらのエネルギー受容分子の合成は未着手であるため、中心金属としてPdなどを含むアニオン性のポルフィリン合成に着手する。これらの結果を相補的に比較検討することで、目的とする複合アニオンフォトンアップコンバージョン膜の作成を行う。
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