研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
17H05479
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
是津 信行 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10432519)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 結晶成長 / イオン結晶 / 表面・界面物性 / セラミックス |
研究実績の概要 |
ガーネット型結晶に取り組む前段階として,比較的酸素欠損を形成しやすいスピネル型LiNi0.5Mn1.5O4-dをモデル化合物として,実験的,ならびに第一原理DFT計算による理論計算的アプロ―チにより,反応条件を探索した。結晶表面の混合アニオン化のための,アニオン源として,アモルファス性ヘテロナノカーボン粒子を用いた。室温で液体の複素環式化合物溶液中でグロー放電することにより,任意のアニオンを導入した,アモルファス性ヘテロナノカーボン粒子を合成した。これらの粒子とフラックス育成した酸化物結晶を混焼することにより,目的の化合物が得られるか調べた。結果として,スピネル型LiNi0.5Mn1.5O4-dにおいては,酸フッ化,酸硫化できることを明らかにした。さらに,電気化学測定および第一原理計算による電気化学反応予測から,酸化物とは異なる特異的イオン拡散挙動および電解液との界面反応を示すことを見いだした。さらに,これらの成果は国内外でも高い評価を受け,複数の招待講演の依頼,さらにフランスのモンペリエ大学との共同研究を開始し,平成30年度科研費「国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))」の申請に至った。これらの知見を基に,ガーネット型材料についても検討し,結晶表面の酸硫化に成功した。表面を酸硫化することにより,酸化物と比較して,800℃程度の低温でも緻密な焼結体が得られた。粒成長はほとんど見られずに緻密化されていることから,硫黄置換により,焼結反応初期過程に見られるネッキング形成速度が高速化された可能性が高い。一部の結果については,NPG Asia Materials,Sci. Rep. 誌に成果をまとめた。その他,1件の特許を出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶表面の複合アニオン化によって,酸化物とは異なる電気化学特性,焼結特性など,当初に予想していた通りの新しい知見を見いだすことができた。関連技術で既に国内外で複数の共同研究に発展していることから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
連携研究者(NIMS西川)と協同して,①フラックス法により育成したガーネット型混合アニオン固体電解質単結晶粒子の単粒子測定(EIS測定,中性子回折,in situ XRD,in situ TEM,in situ Raman,in situ大気圧SEM等)により,そのintrinsic なリチウムイオン伝導度(バルク伝導率)の決定と大気安定性を明らかにする。加えて,②結晶終端面酸素のアニオン(酸硫化物,酸ハロゲン化物)置換が粒界における整合性やイオン輸送特性に及ぼす影響を丹念に調べる。具体的には,傾角粒界におけるリチウムイオン伝導挙動を計算科学的に解析し,その結果を基にして,方位の規定されたバイクリスタル基板表面から任意傾角粒界で接合した稠密結晶層をフラックスコーティング形成する。プローブを用いたインピーダンス計測やケルビンプローブ顕微鏡を用いたマルチスケール解析により,稠密結晶層中に含まれる任意の傾角粒界を伝導するリチウムイオン輸送現象を可視化する。
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