研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
17H05482
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今中 信人 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30192503)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 固体電解質 / 塩化物イオン / 希土類酸塩化物 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、希土類オキシ塩化物(ROCl:R = rare earths)の塩化物イオン伝導性について系統的な評価を行うことを目的とし、種々の希土類オキシ塩化物の中で、耐水性、耐熱性に優れるLaOClを母体として選択し、La3+イオンサイトをNa+イオンおよびSr2+イオンで部分置換したLa0.9-xNaxSr0.1OCl0.9-2xを合成し、そのイオン伝導性を調べた。 La0.9-xNaxSr0.1OCl0.9-2xは、x≦0.1の試料ではLaOClに帰属されるピークのみが観測され、単相試料が得られたのに対し、x>0.1の試料においては不純物相としてSrCl2およびLa2O3が生成することがわかった。また、単相試料として得られたx≦0.1の試料においては、Na+イオンの増加とともに格子体積は単調に増大していることから、La3+イオンサイトをよりイオン半径の大きいNa+イオンおよびSr2+イオンが置換したと考えられる。さらに、x≦0.1の試料において、Na+イオンの添加量が増加するに従い導電率が増大し、x = 0.10の試料において、最大の値を示した。これは、格子体積の増大に伴い伝導経路が拡大したことに加え、Cl-イオンの伝導経路であるCl-イオン欠陥が増加したためと考えられる。 x = 0.10の試料は、これまで最も高いCl-イオン伝導性を示すことが報告されているLa0.8Ca0.2OCl0.8と比較して高い導電率を示し、600°CにおいてLa0.8Ca0.2OCl0.8と比較して約7.7倍高い導電率を示すことが明らかとなった。なお、種々の雰囲気下での導電率測定および電気分解法により、La0.8Na0.1Sr0.1OCl0.7の伝導イオン種はCl-イオンであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオンサイズの大きな塩化物イオンを伝導種とし、化学的・熱的安定性を有する固体電解質の開発にあたり、希土類の酸塩化物を選択し、かつ塩化物イオン欠陥を意図的に導入できれば、目的の塩化物イオン伝導体が開発できると考え、LaOClのLaサイトを任意の金属カチオンで置換した試料を合成した結果、予想した通り、高い塩化物イオン伝導性を示すことが明らかとなった。また、本手法は、他のハロゲン化物イオン伝導体にも適用可能な汎用性の高い手法であることも見出していることから、次年度の研究につながる成果と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度(2年目)では、対象とする伝導イオン種に、塩化物イオンよりも大きな臭化物イオンを選択し、1年目の研究で見出した希土類の酸ハロゲン化物における希土類イオンを他の低価数カチオンで部分置換する手法を適用し、熱的・化学的安定性を有し、かつ高いイオン伝導性を示す臭化物イオン伝導体に着手する。選択する希土類には、イオン半径の大きなランタンおよびセリウムを選択するが、比較実験として、その他の希土類オキシ臭化物についても検討を行う。一方、熱的・化学的安定性およびイオン伝導性発現には、酸素が必要であるとの考えを実証するため、単純な希土類臭化物を母体として用いた試料も合成し、希土類オキシハロゲン化物における酸化物イオンとハロゲン化物イオンの複合アニオン効果についても調べる。
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