平成29年度は、希土類オキシ塩化物の塩化物イオン伝導性について系統的な評価を行い、高い塩化物イオン伝導性を実現した。 平成30年度は、塩化物イオンよりもイオン半径が大きな臭化物イオンを対象とし、1年めで得られた知見を基に、新規なイオン伝導体の創成を目指した。母体としては、耐水性、耐熱性に優れるLaOBrを選択し、La3+イオンサイトをSr2+およびCa2+イオンで部分置換したLa1-x-ySrxCayOBr1-x-yを合成した。Sr添加量(x)を0.1で固定し、Ca添加量(y)を変化させたところ、y=0.05の場合において最大の導電率が得られた。一方、Ca添加量(y)を0.05で固定し、Sr添加量(x)を変化させたところ、x=0.1の場合に最大の導電率を示した。このように、SrやCaの添加により導電率が向上した要因は、低価数イオンの導入により臭化物イオン欠陥が形成され、その欠陥を介して臭化物イオンが伝導しやすくなったためと考えられる。一方、添加量が多すぎる場合は、LaOBrの結晶構造を保持できず、不純物相が現れたために導電率が低下したと考えられる。以上の結果から、La0.85Sr0.1Ca0.05OBr0.85において最大の導電率が得られ、これまでに報告していたLa0.9Sr0.1OBr0.9と比較して約5倍(800℃)高い導電率を示すことが明らかになった。さらに、改良型Tubandt電気分解により、La0.85Sr0.1Ca0.05OBr0.85の伝導種が臭化物イオンのみであることも実証している。 以上、本研究により、ハロゲン欠陥量および格子サイズを意図的に制御することにより、高いイオン伝導性を示す新規な塩化物イオン伝導体および臭化物イオン伝導体を実現した。
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