研究実績の概要 |
本年度は、ナイトライドアニオン(N3-)、シアノアニオン(CN-)から成る五配位構造の極性マンガン錯体分子 [MnN(CN)4]2- を最小単位として、室温で分子集積することで三種類の複合アニオン型一次元マンガン窒化物 C2[MnN(CN)4] (C = K, Na, Li) を合成し、その結晶構造解析、電子状態の決定に成功した。単結晶構造解析から全ての化合物でマンガン錯体分子がhead to tail で連結することで極性有する一次元鎖構造をとり、その一次元鎖が並列に配列した結晶構造を有していた。更に、単結晶構造解析から K2[MnN(CN)4] および Li2[MnN(CN)4] は一次元極性構造を有していた一方で、Na2[MnN(CN)4] は極性を打消しあった構造であった。得られた極性構造については、粉末試料を用いた第二次高調波発生(SHG)測定からも確かめられた。また、特に K2[MnN(CN)4] の状態密度計算により一次元鎖方向にバンド構造ができており、一次元鎖間は錯体分子の性質を示すことが明らかとなった。単結晶の色に着目すると、K2[MnN(CN)4] は赤色、Na2[MnN(CN)4] は青色を示し、この色の違いについて反射スペクトル測定を用いて検討した。その結果、一次元鎖を構築している分子間相互作用の違いによりシアノアニオンの配位角度が異なることで、中心金属であるマンガンイオンのd軌道準位が変化し、異なるエネルギーでd-d遷移を示していることが明らかとなった。また、粉末ペレットを用いたインピーダンス測定からは、一次元鎖間に取り込まれた水分子によるプロトン伝導を示すことが分かった。
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