研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
17H05492
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
小林 玄器 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 特任准教授 (30609847)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒドリドイオン導電体 / 酸水素化物 / 固体イオニクス / 電気化学デバイス |
研究実績の概要 |
我々は、ヒドリドイオン導電体A2LiH3O ( A = Sr, Ba)がそれぞれ350 ℃と300℃でアニオン空孔、H、Oの配列が変化する相転移が生じ、イオン導電率が急激に上昇することを確認している。しかし、これまでは、アニオンと空孔が規則配列した低温相の超格子構造を明らかにできておらず、A2LiH3Oの相転移挙動とイオン導電率の関連性について理解が不十分であった。H29年度は、中性子回折と放射光X線回折を相補的に用いた結晶構造解析と固体NMR測定により、超格子構造の決定とヒドリドのダイナミクスと構造相転移との相関を明らかにすることを目指した。 構造解析の結果、A2LiH3O ( A = Sr, Ba)の低温相では、Li(H, O)6八面体の頂点位置にHとOが交互に並び、AサイトのSr(Ba)が欠損したことで導入されたアニオン空孔がLiH4面内に規則配列していることが明らかになった。一方、高温相では、八面体頂点位置のH/Oの配列とLiH4面内の空孔がそれぞれ不規則配列する。 固体NMRから、A2LiH3O ( A = Sr, Ba)中のヒドリドの拡散が温度上昇に伴って活発化することを確認し、緩和時間の温度依存性から、相転移温度付近でヒドリド拡散の活性化エネルギーが低下する傾向を得た。このNMRから得られた結果は、電気化学測定から得られ得た導電率の変化と一致する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域内で固体NMRを専門とする研究者と連携することでヒドリド導電性酸水素化物のイオン拡散挙動と構造相転移との関連性を明確に捉えることができた。この成果により、今後、温度可変の中性子回折や中性子準弾性散乱などを組み合わせてより詳細なヒドリドイオン導電機構を調べることができるであろう。また、高いイオン導電率が得られるA2LiH3O (A = Sr, Ba)の高温相の結晶構造がAサイトへの元素置換によって低温で安定化できることが見出され、300℃以下でヒドリド超イオン導電性を示す物質の開発指針が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1. A2LiH3O (A = Sr, Ba)のイオン導電機構解析 固体NMR、高温中性子回折、中性子準弾性散乱を組み合わせ、ヒドリド導電機構を明らかにする。 2. 物質探索 A2LiH3O (A = Sr, Ba)のAサイトに元素置換を施すことで高温相を安定化させ、高いイオン導電率が得られる温度範囲を拡大する。また、A2LiH3O の物質開発から得られた知見を活かし、他の結晶構造の物質を開拓する。
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