研究領域 | 細胞死を起点とする生体制御ネットワークの解明 |
研究課題/領域番号 |
17H05495
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 ちぐさ 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50510054)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 貪食 / ホスファチジルセリン / PS受容体 / CD300a / マクロファージ |
研究実績の概要 |
アポトーシス細胞の貪食は貪食細胞に発現するホスファチジルセリン(PS) 受容体が担っているが、その制御機構については充分に解明されていない。我々は、マクロファージなどの骨髄球系細胞に発現する抑制性免疫受容体であるCD300aを同定し、CD300aが新しいPS受容体であることを明らかにしてきたが、最近、マクロファージ上に発現するCD300aがアポトーシス細胞上のPSと結合して、貪食を抑制するというこれまで知られていなかった現象を見いだした。よって本研究では、 CD300aによるアポトーシス細胞の貪食抑制のメカニズム(平成29年度)と、その生理学的、病理学的意義を明らかにする(平成30年度)ことを目的とした。 CD300aは、チロシンの脱リン酸化を誘導することにより細胞内活性化シグナルを抑制することから、チロシンリン酸化を介して貪食に関与するPS受容体であるMerTK がCD300aの標的として最も可能性が考えられ、CD300aによる貪食抑制メカニズムは、CD300aのITIMsを介したチロシンフォスファターゼのリクルートがMerTKの細胞内チロシンのリン酸化を抑制していることによるものではないかという作業仮説に基づいて研究を進めた。しかし、MerTKシグナル抑制剤、及び抗MerTK抗体によってMerTKシグナルを抑制しても、CD300aによる貪食抑制効果が依然認められたことより、CD300aはMerTKによる貪食を抑制しているのではないと考えられた。よって、他のPSレセプターによる貪食シグナルを解析した。予期していなかった事に、同じCD300ファミリーであるものの、活性化レセプターであるCD300bを介したDAP12のシグナルが標的貪食シグナルであることをそれぞれ、DAP12, CD300b遺伝子欠損マウス由来のマクロファージを用いることで明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はCD300aによる貪食抑制メカニズムを明らかにすることに焦点を当てた研究を行った。当初の作業仮説は異なり、予期しなかった結果を得たが、CD300aによる貪食抑制メカニズムは明らかとなったため、概ね順調に経過している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はCD300aによるアポトーシス細胞の貪食抑制の生理学的、病理学的意義を明らかにすることを計画する。 1)血球貪食症候群モデルにおけるCD300a貪食抑制受容体の機能解明 脾臓マクロファージが過剰に血球を貪食し、汎血球減少をきたす疾患である、血球貪食症候群のマウスモデルを作製し、この疾患病態におけるCD300aの機能を解析する。脾臓マクロファージ分画のPS受容体の発現を解析する。次に、すでに樹立したCd300afl/fl LysM-Creマウスを用いて、Poli I:C, もしくはCpGを経静脈投与し、骨髄、および末梢血の血球数を測定する。赤血球特異マーカー(TER119)、血小板特異マーカー(CD41)の貪食細胞内での発現をフローサイトメトリー法で解析し、血球貪食能を評価することにより、CD300aの貪食抑制能が生体で機能しているのかを解析する。 2)自己免疫疾患マウスモデルにおけるCD300aの貪食抑制機能の役割の解明 1)と平行して、脳を主体とする自己免疫疾患のモデルを用いてCD300aの貪食抑制受容体としての生体での機能を解明する。予備実験において、野生型、及びCD300a遺伝子欠損マウスに、ミエリン塩基性タンパク質を用いて実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE)を発症させると、CD300a遺伝子欠損マウスでは、その症状が軽減する傾向を認めた。Cd300afl/fl LysM-Creマウスを用いてEAEモデルを作製することにより、貪食細胞上のCD300aが自己免疫疾患に関与しているかを検証する評価は臨床症状および、病理組織像、T細胞の浸潤、活性化を指標とし、更に、ミクログリアにおける貪食機能を検証する。
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