研究実績の概要 |
アポトーシス細胞の貪食は貪食細胞に発現するホスファチジルセリン(Phosphatidylserine, PS) 受容体が担っているが、その制御機構については充分に解明されていない。我々は、マクロファージなどの骨髄球系細胞に発現する抑制性免疫受容体であるCD300aを同定し、CD300aが新しいPS受容体であることを明らかにしてきたが、最近、マクロファージ上に発現するCD300aがアポトーシス細胞上のPSと結合して、貪食を抑制するというこれまで知られていなかった現象を見いだしたため、本研究では、 CD300aによるアポトーシス細胞の貪食抑制のメカニズム(平成29年度)と、その生理学的、病理学的意義を明らかにすること(平成30年度)を目的とした。 今年度は、マクロファージ上のCD300a遺伝子を欠損させたコンディショナルノックアウトマウス(Lyz2 Cre Cd300afl/flマウス)を用いて、貪食抑制の病理学的意義を明らかにした。死細胞が短時間に多く出現するモデルとして、マウス脳梗塞モデル(中大脳動脈閉塞再灌流モデル)を作製し、コントロールマウスとコンディショナルノックアウトマウスで脳神経症状と脳組織標本を比較したところ、コンディショナルノックアウトマウスでは顕著に神経症状が改善し、神経細胞死が認められる領域も減少していた。また、脳梗塞後、脳に浸潤してくるマクロファージの死細胞に対する貪食が、コンディショナルノックアウトマウス由来のマクロファージで亢進していることが明らかとなり、CD300aは貪食を抑制することで脳梗塞を増悪させていると考えられた。これらのことから、CD300aによる貪食抑制が生体においても大きな役割を担っていることが明らかとなった。
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