研究実績の概要 |
本研究では活性酸素種(Reactive Oxygen Species, ROS)が関与するプログラム細胞の誘導機構解明を目指した。近年、様々な計画的ネクローシスの誘導機構が明らかとなりつつあり、その多くがROSの発生を介した機構が提唱されている。しかし、ROSには様々な活性種が存在し、どのようなROS活性種がどのような生体分子との反応を介して細胞死誘導機構が制御されているのかは、現在においても解明が困難である。研究代表者はROS誘導性の細胞死を制御する低分子化合物を用いた以下2つのアプローチにより研究を行った。 1.細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化能を併せ持つプローブの合成 2015年度からの新学術領域「ダイイングコード」公募班としての研究課題において、我々は、生体内の一電子移動反応に応答してタンパク質と共有結合を形成(ラベル化)する低分子化合物を見出していた。一電子移動はROS誘導性の細胞死の制御に重要であることから、様々な構造の化合物を合成し、ROS誘導性の細胞死抑制活性とタンパク質ラベル化能を評価した。両活性を併せ持つ化合物を見出した。 2.NET阻害剤の標的分子同定による細胞死制御機構の解明 好中球が感染時にROSを介して核内のクロマチンを細胞外に放出することが近年注目されている。このクロマチン網はneutrophil extracellular traps (NET)と呼ばれ、新たなタイプの細胞死として注目されている。そこで、本新学術領域内の共同研究者が見出したNET阻害剤の標的タンパク質同定を目指した。我々が独自に開発したタンパク質ラベル化技術を応用し、低分子性のNET阻害剤の標的タンパク質候補を同定した。
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