公募研究
ミトコンドリアにはミトコンドリアDNA(mtDNA)を含めてDAMPとなり得る物質が存在する。多くの肝疾患でミトコンドリア障害を伴っており、疾患の制御には障害ミトコンドリアを適切に処理することが重要である。そこで,今回我々はmtDNAの処理機構に着目し、ライソソーム内に存在し,DNA分解に重要であると報告されているDNaseIIの意義について検討した。マウス肝細胞株にCCCP添加によりミトコンドリア障害を誘導するとDNaseIIの発現上昇が認められた。野生型マウスに高脂肪食負荷を行ったところ、負荷1週で有意なDNaseIIの発現上昇が認められた。肝細胞特異的DNaseII欠損マウスを作成したところ生理的条件下では表現型を示さなかった。そこで、持続的なアポトーシス刺激によりミトコンドリア障害を呈する肝細胞特異的Mcl-1欠損マウスと交配し,Mcl-1/DNaseII二重欠損(DKO)マウスを作成し検討した。DKOマウスはMcl-1欠損マウスに比して,血清ALT値の有意な上昇を認めた。両者ではアポトーシスの程度に差を認めないが、DKOマウスでは肝組織中のPI陽性細胞の有意な増加を認め、非アポトーシス細胞死の増加が示唆された。また、DKOマウスではMcl-1欠損マウスに比して、肝細胞細胞質ゾル分画中のmtDNAの蓄積を認めた。mtDNAは細菌と同様のCpGモチーフを有することからTLR9を介して認識される。DKOマウスではMcl-1欠損マウスに比してTLR9下流のIFNbの発現上昇が認められた。DKOマウスにTLR9阻害薬を投与したところIFNbの発現上昇は改善し、PI陽性細胞数及び血清ALT値は低下した。肝細胞DNaseIIは、アポトーシス刺激下で生じるミトコンドリア障害時にmtDNAの分解を介して肝細胞非アポトーシス型細胞死の誘導を抑制している可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
In vitroの実験は予定通り進捗し、本実験に使用予定のマウスの作成も終了し、予定しているin vivoの実験も開始されている。
認められている非アポトーシス型細胞死がnecroptosisであるのかどうかについて、検討を進める。In vivoでの解析を引き続き行い、認められている非アポトーシス型細胞死の臨床的意義を明らかにする。さらに、臨床検体でDNase II活性を測定する。
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