公募研究
脳に存在するニューロン(神経細胞)の大部分は、胎生期あるいは生後の発達期に作られる。しかし、多くの動物種において、脳内で外界からの嗅覚情報を処理する嗅球においては、成体においても継続的にニューロンの細胞死とニューロン再生が起こっていることが知られている。以前代表者らは、二光子顕微鏡を用いて、嗅球ニューロンが細胞死によって除去され、同じ場所に同じ種類のニューロンが再生するという嗅覚入力依存的なニューロン再生メカニズムを見出した。本課題では、二光子イメージング等を用いて、ミクログリアが死んだニューロンを除去し、新しいニューロンの再生を助ける生理的なメカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。平成29年度実験実施計画に沿って、以下の研究を行った。(1)貪食中ミクログリアの形態と周囲環境の解析:マウス脳の嗅球において、ニューロンが細胞死を起こした後、ミクログリアによって捕捉・貪食されるしくみの詳細を明らかにするために、死細胞やミクログリアの微細構造、及びそれらの周囲の細胞群を、電子顕微鏡などを用いて解析した。(2) ミクログリアによる貪食作用がニューロン再生に与える影響の解析:嗅球内で、死んだニューロンをミクログリアが貪食をすることによって、新しいニューロンの再生にどのような影響が生じるかを調べるための解析を行った。また、マウスにおいて死細胞の貪食を特異的に抑制する実験の準備を行った。(3) ニューロン再生を促進する因子・環境の探索:ニューロンが死んだ後で、ニューロンの再生を促進する因子の候補について、その特徴を解析した。
2: おおむね順調に進展している
嗅球内におけるニューロンの細胞死と貪食細胞の形態学的な特徴についての情報が得られた。細胞死の後でニューロンの再生を促進するメカニズムについての手がかりが得られた。また、貪食を抑制する実験の準備も、順調に進んでいる。
平成29年度に得られた情報に基づき、ニューロンの細胞死と再生のメカニズムについて、動物実験や細胞培養などを用いてさらに詳細に解析する。準備中の方法を用いて細胞の貪食を抑制し、再生に与える影響を解析する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 16件、 招待講演 9件) 図書 (1件) 備考 (5件)
The EMBO Journal
巻: 37 ページ: e97404
10.15252/embj.201797404
Cell Stem Cell
巻: 22 ページ: 128~137
10.1016/j.stem.2017.11.005
Cell Reports
巻: 20 ページ: 960~972
10.1016/j.celrep.2017.06.089
Stem Cell Reports
巻: 9 ページ: 203~216
10.1016/j.stemcr.2017.05.024
Advanced Healthcare Materials
巻: 6 ページ: -
10.1002/adhm.201700183
Journal of Neurochemistry
巻: 141 ページ: 835~847
10.1111/jnc.14002
科研費NEWS
巻: 3 ページ: -
http://k-sawamoto.com/
http://www.nagoya-cu.ac.jp/about/press/press/release/files/20180118/300119.pdf
http://www.nips.ac.jp/release/2018/01/post_355.html
http://www.nagoya-cu.ac.jp/about/press/press/release/files/20171222/291222.pdf
http://www.nips.ac.jp/release/2017/12/post_354.html