CAG-Cre下でRap1bを欠損させる遺伝子組換えマウスを作出し、骨髄移植によって好中球特異的にRap1bを欠損させた。骨髄移植マウスの骨髄から調整した好中球でRap1bが欠損していることをウエスタンブロットで確認した。野生型マウス肺においてはLPS刺激で誘導されるNET様のDNA放出が二光子励起顕微鏡観察で確認した。好中球自体の可視化は赤色蛍光タンパク質または蛍光標識抗体(anti-Ly6G)で行った。一方、好中球特異的Rap1b欠損マウスでは、NET放出が減弱している傾向があり、細胞動態にも異常が見られたため、現在定量的な解析を進めている。Rap1b欠損好中球は細胞動態異常以外にも興味深いフェノタイプを示すことを発見しており、再現性も含め、現在検証を行っている。(論文投稿のため、本誌には詳細を記載しない。)しかし、Rap1b欠損マウス産子の生育不良や産子数の少なさのためにマウス作出計画は遅れている。また、前年度までにIntegrinの活性調節因子であるKindlin-3の好中球特異的欠損マウスの作出を完了し、当該年度ではTalin-1およびKindlin-3/Talin-1の二重欠損マウスの作出を完了した。 先行論文で報告されているミトコンドリアDNAが放出されるタイプのNETosis(vital NETosis)の分子メカニズムを調べるために、mitoSOX染色を行った。しかし、通常使用される1-5μMでミトコンドリアではなく、好中球DNAがmitoSOXで染色されることが判明した。過去の報告に一部がartifactである可能性も含め、vital NETosisの分子メカニズムを再確認する必要がある。
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