公募研究
植物の免疫応答では、葉緑体における活性酸素種 (ROS) の生成が誘導されることが知られている。光化学系II (PSII) では一重項酸素が、PSIではO2-が生成される。レトログレードシグナルとしてO2-から派生したH2O2が葉緑体から核へ直接送り込まれる可能性が示されている。葉緑体のH2O2は、葉緑体または核でROSセンサー分子に受容されると予想される。本研究では、葉緑体のROSを介したシグナル伝達機構の解明を目指し、免疫応答、PTI (pattern-triggered immunity) および細胞死を伴うETI (effector-triggered immunity) におけるROSセンサー分子の役割を調べた。ROSを介した主なシグナル伝達は、センサー分子のシステイン残基がH2O2と反応してスルフェン酸を形成し、スルフェン酸が修飾を受けることでシグナルが誘導される。スルフェン酸と反応してシグナル伝達を阻害するYAP1を葉緑体に発現させたところ、INF1誘導による細胞死が抑制された。ベンサミアナタバコにPTIとETIをそれぞれ誘導し、クロロフィル蛍光とガス交換速度の測定により光合成活性測定を行った。ETIを誘導するRpi-blb2/AVRblb2は、PSI に連動するCO2固定活性を顕著に抑制した。一方で、PTIを誘導するflg22はCO2固定に影響を与えなかった。さらに、PTIとETIは共にPSII活性に影響を与えなかった。以上の結果から、ETIにおけるCO2固定阻害に起因した過剰なNADPHが、葉緑体でのROS生成に寄与しているものと考えられた。以上より、葉緑体のROSシグナルは、細胞死を誘導する因子に関連した複雑なネットワークを形成しているものと思われた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Molecular Plant Pathology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/mpp.12802
https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/%7ebio4283/index.html