公募研究
活性酸素種は、様々な細胞応答において重要な役割を果たしており、自然免疫応答にも深く関わっている。自然免疫機構は、体内に侵入した病原体を認識してその排除を行う一方で、過剰に摂取した代謝成分由来の結晶などを認識して過度の炎症による組織損傷を惹起する。病原体や代謝成分由来の結晶などの異物に応じて上昇する細胞内の活性酸素種は、自然免疫応答を仲介する。特に、病原体の感染や結晶の暴露は、ミトコンドリアからの活性酸素種の産生を誘導する。ミトコンドリア由来の活性酸素種は自然免疫機構であるNLRP3インフラマソームを活性化して炎症性サイトカインであるIL-1betaの放出を促進するが、その分子機序には不明な点が多い。また、活性酸素種の上昇は、細胞膜脂質の過酸化を誘導するが、自然免疫応答との関連性については不明な点が多い。そこで本研究では、NLRP3インフラマソームや膜脂質過酸化に関する解析を行った。はじめに、ミトコンドリアからの活性酸素種の産生を代謝成分由来の結晶が誘導する機序を解明する目的で、化合物スクリーニングを行った。その結果、ミトコンドリアからの活性酸素種の産生を阻害することによりNLRP3インフラマソーム活性化を抑制する化合物を同定した。今後は、当該化合物の標的因子を同定し、代謝成分由来の結晶が誘導する自然免疫応答の分子機序解明を目指す。続いて、膜脂質過酸化が誘導する免疫応答の制御因子を同定するため、プロテオーム解析を行った。マクロファージの全細胞溶解液から1000種以上のタンパク質を同定した。膜脂質過酸化を誘導した際には、ペルオキシダーゼ類や細胞膜の伸長・退縮に関わるタンパク質が増加する一方、脂質ラフトに局在するタンパク質が減少することなどを見出した。今後は、発現変動が顕著なタンパク質の機能を解析し、新たな自然免疫機構やその病態生理的意義の解明につなげていく。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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